慶應義塾大学大学院法務研究科客員教授 川﨑政司
自治体議会議員のあり方を考える上でも重要となってくるのが「議員報酬」であるが、これをめぐっては従来から様々な議論や動きが見られる。議論や問題が錯綜(さくそう)しており、論じにくいところもあるが、議員の地位・性格などにもかかわる本質的な問題でもあることから、議員報酬の問題について、概観し、考えてみたい。
1 議員報酬の歴史
自治体議会の議員には、議員報酬等が支払われることが地方自治法で規定されている。すなわち、同法203条は1項で議員報酬を支給しなければならないと規定するとともに、同条2項・3項で費用弁償と期末手当を支給できると規定しており、これらの額や支給方法については条例で定めるものとされている(同条4項)。
戦前においては、市町村会と府県会の議員については、名誉職とされ、報酬は支給されていなかった。すなわち、1888(明治21)年制定の市制町村制ではともに16条で「議員ハ名誉職トス」とされる一方、75条では「名誉職員ハ……職務取扱ノ為ニ要スル実費ノ弁償ヲ受クルコトヲ得」と規定されていたが、1911(明治44)年の全部改正の際に給料・給与の規定が整理され、費用弁償の対象として市町村会議員も明記され、疑問の余地なく費用弁償を受けることになった。
他方、府県会議員については、1890年制定の府県制では、5条で名誉職と規定されるとともに、55条において「府県会議員ニハ旅費及滞在手当ニ限リ之ヲ給スルコトヲ得」とされ、滞在手当には上限が設けられていたが、1899年の改正で市町村会議員と同様に他の名誉職と一緒に費用弁償の対象とされた。
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