慶應義塾大学大学院法務研究科客員教授 川﨑政司
今回も、前回(第28回)での考察も踏まえつつ、引き続き、自治体議会と多様性の問題について取り上げ、その点から、選挙制度その他の選挙環境、障害のある人への配慮、ハラスメント問題などに関し考えてみたい。
5 多様な人が立候補・当選しやすい選挙環境の整備
多様な人が議員となれるようにしていくためには、やはり選挙制度のあり方にも目を向ける必要があるだろう。
(1)選挙制度
選挙制度においては、形式的な平等が重視され、被選挙権が認められる者に対しては、誰にでも同じように開かれ、誰でも同じように取り扱うことになるのであり、その点では、性別や年齢などに対しても中立的なものになっているといえる。ただ、現実の社会や政治の状況などを考慮するならば、制度やそのあり方により女性や若者などの進出に有利・不利といったことを生じうることも否定できないところである。このようなことから、議会の構成の多様性を確保するために、女性や若者など多様な人が選出されやすいとされる選挙制度の導入が論じられることもある。
例えば、一般に、女性や若者など多様な人が選出されやすいのは比例代表制であり、それらの人が選出されにくいのは小選挙区制といわれることがある。確かに、名簿式比例代表制の場合には、政党の判断・対応によることになるものの、特に拘束名簿式については、これまでにも女性、障害者などが当選してきた。これに対し、小選挙区制については、1人しか当選しないことや、現職有利となりやすいことなどもあって、多様な人が新人として立候補や当選をしにくいともいわれるが、それは、多分に現在の政治・社会の状況を前提とするものであって、本来的にそのような意義・機能等をもつわけではない。
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