早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員 佐藤 淳
《今回のキーワード》
|
今回から、各回で取り上げるテーマを分かりやすくイメージしてもらう導入として、架空の自治体「ここち市役所」の議会事務局職員、江上慎吾を主人公とした「議会と議会事務局の変革ストーリー」【SHORT STORY】を記事の最初に設けることにしました。こちらも併せてお楽しみください。
【SHORT STORY】
「議会が政策提言なんてできっこないよな」と、若手議会事務局職員の江上は、ここち市役所の地下の食堂で一人日替わり定食を食べながら自分を納得させるようにぼやいていた。午前中の議会改革推進会議が終了して片付けをしているときに、事務局歴の長い山田次長が、「無理無理無理。そんなことうちの議会で今までやったことないし」、「古江議員の話は、右から左に聞き流しておけばいいよ」と笑いながら話している顔が頭の中から離れない。
発端は、会議の終盤で2期目の古江議員が発した「議会基本条例に、議会は政策提言を行うって書いていますが、今何もできていないのでは」、という問題提起。その発言に、議会の重鎮・青木議員が舌打ちしながら怪訝(けげん)そうな顔を示す。青木議員の様子を察して間髪入れずに同じ会派の赤平議員が、「我がここち市議会では、各議員が一般質問で市政に積極的に政策提言している。それでこれまで何も問題なかった」と。「いや議会基本条例の条文の主語は議会です。私が言いたいのは、議会として政策提言できていないってことですよ」と古江議員が食い下がる。どんよりとした沈黙の後、青木議員が恫喝(どうかつ)するように一言、「議会の役割は市政を監視することだ」。ここち市議会で青木議員に面と向かって反論する議員はいない。推進会議の委員長である安田議長もそうだ。「そろそろお昼のようなので。山田次長、次回の日程は」。
昼食を早めに切り上げた江上は、事務局の席に戻り、来月開催予定の議会報告会の案内チラシを作成していた。議会報告会はいつも集客に苦戦している。そのとき、田島事務局長が笑みを浮かべながら近寄ってきた。田島局長は、ここち市初の女性議会事務局長だ。「江上君、福島の会津若松市議会について調べてみたら」。「会津若松って、あの白虎隊のですか」。「そうよ。会津若松の子どもたちは今でも、『やってはならぬ、やらねばならぬ、ならぬことはならぬもの』って小さい頃から教えられているらしいわよ」。江上も笑いながら、「調べなければならぬ、ですか」。
会津若松駅前の白虎隊の像
つづきは、ログイン後に
『議員NAVI』は会員制サービスです。おためし記事の続きはログインしてご覧ください。記事やサイト内のすべてのサービスを利用するためには、会員登録(有料)が必要となります。くわしいご案内は、下記の"『議員NAVI』サービスの詳細を見る"をご覧ください。