慶應義塾大学大学院法務研究科客員教授 川﨑政司
近代以降、日本は、法制度や政治制度の輸入国であり(1)、いまだに、制度の創設や改正に際し、諸外国の制度が参照されることが非常に多い。確かに、そのことによって、諸外国において社会的な要求等に応え、あるいは諸問題に対処するためにどのような制度の創設や改正が行われ、それが実際に社会に対しいかなる結果をもたらしたかなど、制度とその社会的事実との相互関係について実証的な知識を得ることができ、制度について考える場合の有益な資料が得られることが多い。また、国際化の進展とともに、制度・手続・基準等の国際比較と標準化が要請されるようになっている中で、日本のシステムのあり方が国の内外から問われることが増えていることにも留意する必要がある。
しかしながら、実際の議論では、外国に例があるからとか、どこそこの国の制度がそうなっているからといった類いのものが多すぎる。加えて、制度の一部の切り取りや都合の良い情報だけの引用なども少なくない。制度の背景となる国家の成り立ち、国家を取り巻く状況、歴史的経緯、社会的状況等は国によって様々であり、各国の制度はそれぞれ独自の政治的・経済的・社会的な事情やそれぞれの時代的な背景と密接に連関して形づくられているのであって、形式的比較によって得られた知識により軽々に他国の制度を模倣することは、定着をみないばかりでなく、逆に社会的・政治的な混乱をもたらすことにもなりかねない。
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