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2021.03.25 議員活動

自治体議員だからこそできる、条例の立案を[PR]

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 自治体議員自身が主体的に立案する議員提案条例の作り方について、地域の課題の把握から、課題解決のための条例の立案・議会審議・議決までの必要な手続、条例成立後の運用方法等まで理解するための一冊、『条例の種を見つけて作れる!変化に応じて見直せる!「生きた」議員提案条例をつくろう』が2020年11月19日より発売中!以下、抜粋してご紹介します。

1  議員提案条例とは

( 1 )議員提案条例ってなに?
 地方議会の議員は、地方自治法(以下「自治法」という)112条1 項の規定にする「議員の議案提出権」に基づき、議案を議会に提出することができます。議案の提出に際しては、議員定数の12分の1 以上の賛成が必要です(同法112条2 項)。議員が提出できる議案としては、予算、執行機関の人事など首長の専権事項に属するもの以外の議案提出が可能ですが、通常は決議案、意見書決議案、条例議案などがほとんどです。提出された議案が条例案の場合で、これが成立したときには、首長提案の条例と区別して特に議員提案条例といいます。これが「議員提案条例」です。
 議員提案条例には、議会の委員会条例や議員の費用弁償に関する条例などのように、議会の組織や運営のために当然に必要なものと、議員が独自に自治体の政策の一環として提案し制定する条例があります。このうち、特に、後者について「政策的議員提案条例」、「議会の政策条例」、「議員提案の政策条例」などと呼ぶことがあります(以下、このような条例を「政策的議員提案条例」という)。この本では、特に断りのない限り、「議員提案条例」という用語は「政策的議員提案条例」を指すとお考えいただいて結構です。

( 2 )議員提案条例は役所の縦割り主義では絶対できない
 まず、議員提案条例がどのような意義を持つのか、その存在意義を考えてみたいと思います。そもそも、日本にはどのくらいの法令があると思いますか。
 国立国会図書館の法令検索によれば、2020年4 月1 日現在で、わが国には11,081件の法令(憲法、法律、政令、勅令、府令、省令及び規則)が存在しています。このほかに、全国の1,700余りの自治体で条例が制定されています。さらに自治体の規則や各種規程が、このほかにあります。
 つまり、私たちの周りには、相当な数の法令や条例が存在することになります。これは、私たちの国民生活のありとあらゆる場面が、アリのはい出るすき間もないほど法令で埋め尽くされているということを示しています。
 では、それほど法令が整備されているのに、新たに議員提案条例を制定する余地などあるのでしょうか。
 確かに、通常の国民生活の基本的な部分(ナショナル・ミニマム)は、既存の国や地方自治体の法令で十分カバーされています。しかし、国や地方自治体の多くの法令は、全国一律の基準や政策に基づいて、しかも所管の省庁ごとの縦割りでつくられており、必ずしも生活者の視点や地域の個性を尊重する観点からみると、実情にそぐわないものも少なくありません。
 ここに、既存の法令のすき間が生じる余地が出てきます。例えば、古くは昭和40年代には公害被害の激しい地域では、国の環境基準だけでは、地域住民の健康な生活を守ることが難しいとの考えから、地域の実情にあった基準に基づく独自規制が始まりました。また、2000年の地方分権一括法の施行により、機関委任事務制度が廃止されて以降、全国各地で、地域特有の政策課題に対応した自主条例が数多く制定されています。
 しかし、首長提案の条例は、多くは都道府県庁や市役所、町村役場の役人の手により立案されるため、どうしても現場の感覚をダイレクトに感じ取ることや、役所の縦割りの壁を越えることには、自ずから限界があります。
 その点、議員は、日頃は民間人として生活しているわけですから、現場の地域住民の声に耳を傾けるには、役所よりも都合がよい立場にいます。もちろん、これは個々の議員の考え方にもよりますが、全ての地域住民を「顧客」と考え、その満足度を向上することが議員の使命と考える、顧客満足度(CS)指向の高い議員であれば、生活者としての地域住民と同じ目線に立った政策課題を発見することができるはずです。
 この「地域住民と同じ目線に立った政策課題」の発見こそ、議員提案条例の源泉であり、縦割り組織ではなし得ない、議員の「腕のみせどころ」です。
 例えば、千葉県や宮城県ではいわゆる「暴走族規制条例」を議員提案で制定していますが、通常の県庁や警察の考え方では、「オートバイの暴走行為は、既存の道路交通法などの既存の法令で十分に規制が可能であり、条例制定の必要性が乏しい」との回答が返ってくることでしょう。しかし、おそらく、これらの県では、暴走族の被害について、どうしても条例制定をしなければならないほどの住民ニーズが生じており、条例制定の根拠となる立法事実(条例制定の根拠となった事件や事実)として十分なものがあったからこそ、議員提案が制定されたと考えられます。事実、宮城県では、条例制定がされた当時、暴走族の人口に対する割合が全国一であり、憂慮される事態となっていたといわれています。
 このように、議員提案条例は、首長提案では迅速に対応できない地域課題に対しても、地域住民の感覚にあった制度をいち早く制定することができるメリットもあります。

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◆書籍情報
『条例の種を見つけて作れる!変化に応じて見直せる!「生きた」議員提案条例をつくろう』(11/19発売開始)
議員提案条例

 津軽石昭彦 (著)(定価2,420円 (本体:2,200円))
 議会事務局の実務経験がある著者が、地域の課題の把握と議員提案条例の立案の仕方、議決までに必要な手続、成立させた条例の運用等に関する具体的な手法を解説する書籍。

◆ご購入はこちらからどうぞ

津軽石昭彦(関東学院大学法学部地域創生学科教授)

この記事の著者

津軽石昭彦(関東学院大学法学部地域創生学科教授)

岩手県生まれ。1982年岩手県入庁、法務、行政改革、環境、議会等の担当を経て2018年3月退職、同年4月から現職。2009年より岩手県立大学非常勤講師(政策法務論)。この間、各種政策や条例などの企画立案、市町村の議員提案条例の支援等に携わる。2011年度自治体学会賞論文奨励賞受賞。著書に「青森・岩手県境産業廃棄物不法投棄事件」(共著、第一法規)、「議員提案条例をつくろう」(単著、第一法規)など。

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