大津市議会局長/早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員 清水克士
新型コロナウイルスの感染拡大は「新しい生活様式」を定着させ、「密」とは無関係ではない合議制機関の議会でも、これまでの常識など通用しない「新たな議会様式」が求められている。
そして、非常事態に直面したときに、議会機能を維持していくための羅針盤ともいえる議会BCPへの関心が高まっている。本稿では、議会BCPの策定意義から、クラスター発生による本庁舎閉鎖という前代未聞の事態に直面した大津市議会が、議会BCPを改定するに至るまでを記したい。
議会BCP策定の意義
議会BCPとは議会の業務継続計画であり、同志社大学大学院総合政策科学研究科の新川達郎教授の助言のもと、大津市議会が2014年に地方議会で初めて策定したものである。
2015年にはその設置根拠を大津市議会基本条例にも明記するとともに、実務的根拠としての大津市災害等対策基本条例も議会提案で制定している。
議会BCP策定の動機は、東日本大震災の際に多くの自治体で新年度予算が専決処分されたところにある。しかし、地方議会は憲法93条に設置根拠を置くが、平時だけのものとは規定されていない。つまり憲法は議会が議事機関として常に機能発揮することを求めており、非常時であることをもって、安易に専決処分に委ねることを許す法的根拠はないのである。
だが、実情としては、非常時には合議制機関であるがゆえの議会の弱みが顕在化する。警察、消防などの非常時対応を主任務とする組織は、例外なく迅速な意思決定を可能とする強固な指揮命令系統を有する実力組織である。しかるに議会では、議事運営以外には議長の指揮命令権は法定されておらず、意思決定にも時間を要する合議制であるなど、議会は最も非常時対応に向かない組織ともいえるだろう。
だからこそ、法では想定されていない非常時における議会の体制、運営等の行動指針を独自に定めておくことは、議事機関として常に機能発揮するためにはもちろん、自治体としての災害対応の全体最適化のためにも必須といえるのである。
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