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2020.09.10 議会運営

コロナ禍〜そのとき自治体議会はどう動いたか、どう動くべきか〜

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北海道自治体学会議会技術研究会共同代表(前北海道芽室町議会事務局長) 西科 純

1 コロナ禍の議会運営──業務継続を念頭に置いたか

 現在、私は公立芽室病院の事務長の任務に就いている。
 初めての病院勤務から2年を経過し、芽室町議会事務局長として議会改革を担った経験が試されている。病院経営改革の使命に加え、新型コロナウイルス感染症の対応に追われる日々が続いている。緊急時の病院組織にあって、その意思決定には冷静かつ迅速さが求められ、合議制だけではなく、ときに病院長の独任制も求められる。事務長の任に当たって感じたのは、病院経営と議会運営は類似している点が多いということである。例えば院内に設置する委員会である。当院でも29の委員会が構成されているが、これらは議会での常任委員会に似ており、院長会議は議会運営委員会に、経営改革委員会は議会改革特別委員会に、管理職会議は全員協議会に似たイメージがある。
 院内には新型コロナウイルス感染症対策委員会も設置している。細部にわたる対応を協議し実行化につなげる重要な役割を担っている。私は議会BCP(業務継続計画)を策定した経験から、災害時に対応する病院BCPを迅速に策定したが、コロナ禍にあってBCPを応用し各フェーズに沿って対応している。病院経営改革と議会改革のキーワードが「対話」である点も興味深い。
 コロナ禍における病院経営と議会運営を比較すると、病院はコロナ禍にあっても直ちに休診することはできない。院内クラスターが発生する最高フェーズに至る直前まで外来・入院患者を受け入れて診療、予防接種、手術、人工透析などを続けるのが使命である。自然災害が発生しても、あらゆる手段を講じながら業務継続を最優先し、住民の生命と健康を守るという絶対的な使命を果たすべく粘る。
 都道府県庁をはじめ、市役所、役場などの行政機関もまた同様である。有事では行政機能が簡単にストップしてしまうと、住民の生活に支障を来す。災害時には庁舎が存在する以上、あるいは庁舎が消滅してもなお住民に最も身近な役所が業務を継続せざるをえない。
 一方、このコロナ禍の自治体議会の運営はどうであったか。感染拡大防止を念頭に置いて、創意を尽くし、住民の福祉向上を目的に自治体の最高意思決定機関としての業務継続化に取り組んだといえるであろうか。北海道において、独自の緊急事態宣言下での3月定例会は、新年度当初予算の審査期であり、また政府の緊急事態宣言が解除された6月定例会は、感染・経済対策上の補正予算案という重要議件の審査期であった。私が報道や様々な情報から知りえた限りでは、全国の議会で運営面において数々の混乱が生じたようである。
 定例会開会におけるコロナ対策としては、手指消毒、会議室の消毒、検温、マスク着用、議場の換気、座席間隔の拡幅、傍聴の自粛・制限・禁止、一般質問・質疑の中止・取下げ、会期の短縮・延長から、議員の出席自粛、文書通告・書面報告という対応がなされた。傍聴制限・禁止や自粛を呼びかける議会もあり、住民から批判を受けたとする報道が見られた。冷静に考えると、コロナ禍以前の各議会の議会改革の差が如実に表れたにすぎない。議会BCPを応用する議会がその手法の先見性を取り上げられたりもしたが、本来のBCPは業務停止を念頭に置くものではなく、可能な限り業務継続を果たすためのものでなければならない。
 傍聴についても、インターネット中継の視聴を呼びかけることは当然のことであるが、それをできない住民のことを考えれば、議事堂の別室にモニターを設置して視聴してもらうなどの対応をすべきであろう。
 一方で、3密化を徹底的に避け、感染対策を講じた上で通常どおりに運営した議会もある。私が議会サポーターを務める北海道内の別海町議会と沼田町議会がそれに当たる。特に別海町議会は「別海町議会新型コロナウイルス感染予防対策に係る会議規程」を定めた対応が光る。両町議会ともに議会改革を精力的に進めている最中であり、一般質問での登壇議員も多く、質疑及び常任委員会での討論も活発に行っている。したがって、創意の上で一般質問やその他の議件を完遂し、ともにコロナ関連議案の専決処分を行ってもいない。別海町議会では、それ以前から質疑の通告制度を取り入れることによって無駄な時間を全く費やしていないことから、新年度予算案についても何ら問題なく審査を行っている。
 全国では、議会改革を標ぼうする議会がオンラインによる委員会運営への挑戦を見せたが、総務省からの通知(「新型コロナウイルス感染症対策に係る地方公共団体における議会の委員会の開催方法について」(2020年4月30日)の前に撃沈し、「オンライン本会議の実現に必要となる地方自治法改正を求める意見書」の提出(同年6月9日)にとどまったのである。

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西科 純(北海道自治体学会議会技術研究会共同代表(前北海道芽室町議会事務局長) )

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西科 純(北海道自治体学会議会技術研究会共同代表(前北海道芽室町議会事務局長) )

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