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2020.01.10 議会運営

第3回 議会報告会に話し合い成分を追加してみる

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龍谷大学政策学部教授 土山希美枝

  議会報告会が大変「もったいない」ものになっていることを危惧している。
数でいえば、すでに2016年の『議会改革白書』で、自治体議会の50%が「市民との対話の機会」を設けている。しかし、各所で耳にするのは、参加者の減少、固定化、属性の偏り、意見や議論の乏しさを悩む声である。その悩みは、地区ごと開催やワークショップ形式などの模索につながることも、他方では不特定多数の市民との対話の機会が持つ意義への疑問につながることもあるようだ。
どちらの声にも、「市民との対話の機会」の機能や、その機能を発揮するための「話し合い」のデザインが不足しているように感じる。そこで今回は、「市民との対話の機会」としての議会報告会の再設定と、そこに「話し合い」成分を追加するやり方について、事例を使って考えてみたい。

1 「心が折れる議会報告会」の典型

 まず、本稿の課題とする議会報告会の典型を想像してみよう。
 議会報告会をいろいろな経緯でやってみることになった。
 報告と意見交換で、あまり長い時間にするのも参加者の関心がもたないかもしれないし、90分程度で考える。報告に対して意見をもらうとすれば、そもそもあまり意見が出るとは考えられないし、一般的な議会に対する不満や批判を声高に語る市民が多いのも困る。そうすると報告の時間は長く、質疑応答は15分程度の設計になるのではないか。
 理解を高めるために準備をしっかりする。議会の仕組みや話し合いの内容を丁寧に説明する資料を用意し、プレゼンテーションや読み原稿をつくる。
 会場はレクチャー型というか講義形式にしつらえ、議員はきちんとした格好で勢ぞろいする。できる限りの丁寧な対応である。
 ただ、これを、例えば見知った議員のいない参加者である市民から見るとどうなるか。
 講義形式の会場で前に座るのは気乗りのするものではないし、正装した議員が前に並んでいればなおさらである。準備された報告は丁寧だが、その内容は相当に強い関心と集中力がなければすぐ理解したり共感したりすることは難しい。気がそれたり聞き逃す部分も少なくない。そのような状態で質問や意見を求められても出てこない。そんな中で発言することができるのは、報告内容よりも議会や議員の現状、しかもその議会の現状ではなく報道や風評で得た印象をもとにいいたいことがある市民や、報告内容にかかわらず求めたいことがある市民となる。そうした市民がいなければ、ほとんど意見や質問の出ない時間が流れる。つまり、その場の空気は荒れるか冷たいかで、議員はがっかりする。終了後のアンケートでは、意外に肯定的なコメントもあって、それを慰めにするぐらいだろうか。議会としてはまさに来てほしかった参加者である気軽な関心で来場した市民も、いい印象にはならず去ることになる。
 かくして「心が折れる議会報告会」ができ上がる。それを視察で見た議会があれば、苦行のように感じながら参考にして再生産されることになる。

2 どこが「もったいない」のか

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土山希美枝(法政大学法学部教授)

この記事の著者

土山希美枝(法政大学法学部教授)

龍谷大学政策学部教授を経て、2021年から法政大学法学部教授。法政大学大学院社会科学研究科政治学専攻博士課程修了。博士(政治学)。専門分野は、公共政策、地方自治、日本政治。著書に『質問力で高める議員力・議員力』(中央文化社、2019年)。『「質問力」でつくる政策議会』(公人の友社、2018年)。『高度成長期「都市政策」の政治過程』(日本評論社、2007年)など。北海道芦別市生まれ。

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