国立国会図書館 塚田 洋
1 議会図書室は本当に必要なのか
人口減少・少子高齢化による財源不足等を背景に、地方自治体では、前例のない地域課題への対処を求められる場面が増え、政策形成力の向上が課題になっている。条例制定や予算の議決権を持つ地方議会は、地方自治体の政策形成プロセスにおいて重要な役割を担うことから、地方議会の政策形成力の向上もまた急務である。
地方自治法100条19項は、議員の調査研究活動を支える議会独自の情報源として、議会図書室の設置を義務付けている。ただし、これはわずか数十人の議員のために審議に必要な資料をすべて自前でそろえることを意味していない。議会図書室は、政府などから一定範囲の刊行物の送付を受けるほか(地方自治法100条17項・18項)、公共図書館と資料相互貸借を行うこと(図書館法3条4号)が法律で定められている。また、法律ではないが、後に大学図書館との協力(大学基準協会による大学図書館基準)の可能性も示されている(図1)。
一方、このような制度設計が行われた昭和20年代と現在では、情報環境が劇的に変化している。インターネットを通じて最新の行政情報や学術情報を容易に入手できるようになっただけでなく、昨今ではビッグデータの活用が現実のものとなり、地方自治体においても「証拠に基づく政策立案」(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング:EBPM)の導入が試みられている(1)。
議会図書室を起点とした文献調査(図書、雑誌のほか、データベース等を駆使した、司書が得意とする調査)は、政策形成の手法として陳腐化してしまったのだろうか、それとも今日もなお有効なのだろうか。近年の状況を振り返りながら、その答えを探してみたい。
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