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2019.08.13 議会運営

第2回 言論の府

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議会事務局実務研究会 野村憲一

熟議する機関

 今回は、二元代表制の観点から、執行機関に対する議会の位置付けとその役割について考えてみましょう。
 地方議会について、憲法93条1項は、地方公共団体に「議事機関」として議会を設置すること、2項は、地方公共団体の長と議会の議員は住民が直接選挙すること、すなわち二元代表制をとる旨を定めています。
 では、憲法93条1項にいう「議事機関」としての議会とはどういう意味なのでしょうか。そのヒントは、憲法93条1項の英語訳にあります。法務省の「日本法令外国語訳データベースシステム」は、「議事機関」の語を「deliberative organs」と訳しています。deliberativeは「審議する」とか「熟慮の」という意味の形容詞で、現行憲法のもととなった「憲法改正草案要綱」(1946年3月)の英訳でもこの単語が用いられています。
 つまり、議会は「熟慮する機関」、複数の議員が「じっくりと話し合う」合議体の組織だとされているのです。もちろん、議会は自治体の意思決定という重要な役割を担っていますが、その前提として、議会には十分な話し合い=議論をすることが求められているわけです。
 そうすると、先ほどの二元代表制を踏まえれば、議会で「じっくりと話し合う」場面として、「議員vs執行機関」と「議員vs議員」の二つのパターンが考えられるでしょう。そのための「方法」として、議会運営では従来から、主に執行機関を相手とする「質疑・質問」と、議員同士が意見を述べ合う「討論」が行われています。

質疑と質問

 まずは、議員と、長をトップとする執行機関が議論する「質疑・質問」です。いずれも基本的に議員が問い、執行機関が答えるという形をとります(議員発議など議員が答弁する場合もあります)が、標準会議規則は両者の違いを次のように定めています。
 質疑は、条例案や予算案などの議題となった事件について疑義をただすものです。疑義すなわち疑問に対する回答を求めるため、議員は自己の意見を述べることができないとされています(県会規53条3項、市会規55条3項、町村会規54条3項)。
 これに対し、質問は、当該自治体の事務一般について回答を求めるものです(県会規60条、市会規62条、町村会規61条)。一般質問と呼ばれるもので、議員は自らが選んだテーマ(通常は事前に通告されます)の範囲内であれば、発言内容につき特段の制限はありません。したがって議員は、あるテーマに関する見解や問題意識、課題解決に向けた提案など、自分の考えを示しつつ、これに対する執行機関の見解等を尋ねることができます。
 このように、会議規則の上では、質疑と質問の間には「自分の考えを言えるかどうか」について違いがあります。もっとも、例えば議案質疑の場面でも、なぜその疑問を持ったのか、自分の考えや理由を示しつつ執行機関にただした方が、聴いている人にとっては理解がより深まるでしょう。本会議での議案審議において代表「質問」制をとる議会があるのも、「熟議する機関」という観点を意識したものと考えることができると思います。

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この記事の著者

野村憲一(議会事務局実務研究会)

千葉県市川市職員・議会事務局実務研究会会員。民間企業での勤務を経て、2008年市川市役所入庁、2010年より議会事務局。著書に『自治体の議会事務局職員になったら読む本』(共著、学陽書房、2015年)、『いちばんやさしい地方議会の本』(学陽書房、2016年)、『ココがポイント!自治体議員のコンプライアンス』(編著、第一法規、2019年)がある。

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