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2018.09.25 議会改革

町村総会の否定 ──『町村議会のあり方に関する研究会報告書』について(その7)──

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之

はじめに

 総務省に設置された「町村議会のあり方に関する研究会」(以下「研究会」という)の報告書(以下『報告書』という)の実体的な評釈を行っている。前回まで「Ⅰ 社会状況の変化と小規模市町村における議員のなり手不足」を検討してきた。三部構成の『報告書』は次いで、「Ⅱ 町村総会について」と題して町村総会をテーマに取り上げている。大川村の町村総会の検討が研究会設置の契機であったという意味では、同テーマは研究会の中心論題になるはずのものだろう。そこで今回は、町村総会に係る『報告書』の検討を評釈してみよう。

制度の沿革

 時系列比較と国家間比較は、『報告書』の基本的スタイルである。「1 制度の沿革」によれば、町村総会は、沿革的には市制町村制の制定時にまで遡る。このときには「小町村」において条例の規定により町会・村会を設ける代わりに「選挙権を有する町村公民の総会」を設けることができるとされた。もっとも、『報告書』は、町村一般ではなく「小町村」に対象が限定されていたこと、さらに、制限選挙権の時代であり、有権者たる公民の範囲が非常に限定されていたことを指摘する。公民の数が少ないので、議員を選出するまでもない状態を想定していたという。
 「小町村」は、その後「特別の事情のある町村」に改正され、戦後地方自治法において町村総会は町村一般に適用され得る制度になった。しかし、公民制度が廃止され、男女普通選挙権になった現行規定では、町村総会の有権者数は相当大人数となりうるとする。つまり、表面的には町村総会という同一の制度でも、有権者の範囲という環境要因が変化しており、制度が想定する与件が失われているのである。

諸外国の状況

 「2 諸外国の状況」では、アメリカのタウンミーティング(特に、オープンタウンミーティング)や、スイスの住民総会が紹介されている。自治体ごとに詳細は異なるが、こうした住民総会的な会議が現実的に成立するためには、『報告書』は、以下の3点を検討することが必要とする。
 第1は定足数を設けないことである。アメリカでは定足数の定めがない事例があり、スイスでも参加義務を課す事例があるが、総じて参加率が低いことが前提となっているのである。
 第2は、審議と採決を分離し、採決方法として住民投票を採用することである。スイスでは住民総会への参加率が低いので、住民総会では審議だけを行い、決定は別途の住民投票による運用がされている。
 第3は、議決は一定の住民代表から構成することである。アメリカの代表制タウンミーティングでは、全ての有権者がタウンミーティングに参加・発言できるが、議決権は公選されたメンバーに限定する運用がされている。

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金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授)

この記事の著者

金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授)

東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 1967年群馬県生まれ。東京大学法学部卒業。 東京都立大学助教授、オランダ国立ライデン大学社会科学部行政学科客員研究員、東京大学助教授を経て、06年より現職。 専門は自治体行政学・行政学。主な著書に『自治制度』(2008年度公共政策学会賞受賞)、『原発と自治体』(2013年度自治体学会賞受賞)等。

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