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2018.05.25 議会改革

ガバナンスにおける議員と事務局職員との関係から読み解く自治体議会の危機管理論

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法政大学大学院公共政策研究科博士後期課程2年 宇佐美淳

求められる議会事務局の体制強化

 自治体議会においては、全国的に議会改革という言葉がかなり浸透してきており、その改革の段階は第2ステージを迎えているとされる(江藤俊昭『議会改革の第2ステージ──信頼される議会づくりへ』ぎょうせい、2016年)。また、内閣府の第31次地方制度調査会では、その答申の中で、ガバナンスのあり方として、議会の役割について触れており(第31次地方制度調査会「人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申」(2016年)(以下「答申」という)4頁)、議会活動に対する支援の充実として、議会事務局(以下「事務局」という)の体制強化の必要性を挙げている(同20頁)。その事務局の体制強化について、一番単純な方法を挙げるとするならば、それは高い専門性(例えば法曹資格等)を有した人員の増強や、事務局による調査研究のための財源の確保が考えられるが、行政改革の下に職員数が減少傾向にあるとともに、財源も厳しい状況が続く昨今において、そのような対応を図ることは非常に厳しいものと考える。  そこで、答申における事務局体制強化の目的に再度目を向けると、そこには「議会活動に対する支援の充実」とあり、それは平時であっても災害時であっても求められるものであり、逆にいえば、災害時における議会活動に対する支援の充実を図ることにより、平時のそれを図ることにつながりはしないだろうかとも考えられる。そこで、本稿では、自治体議会における危機管理(災害対応)に関する先行研究や先進的事例で本格的に取り上げられることが少なかった、事務局の存在意義及びその役割について中心的に取り上げ、事例分析を通して、ガバナンスを構成する議員と事務局職員との関係について考察することから、自治体議会の危機管理論を読み解いていくこととする。

災害対応における事務局職員の不確かな立ち位置

 2017年4月に議会BCP(Business Continuity Planの略で、「業務継続計画」等と訳される)を策定した神奈川県横須賀市議会では、別途定められている議会災害対策会議運営要綱に基づき、災害時に災害対策会議の設置を予定しており(横須賀市議会「横須賀市議会災害時BCP(業務継続計画)」(2017年)10頁)、事務局の役割について、BCP及び要綱では議会の災害対策会議の業務を補佐するとしているが(同2~3頁、11頁)、市の地域防災計画上では、事務局長は市の災害対策本部の対策部長の一員に(横須賀市防災会議「横須賀市地域防災計画(平成26年度改訂) 第3部 災害応急対策計画」(2015年)7頁)、他の事務局職員は本部の事務分掌上、議会対策部にそれぞれ位置付けられており、事務局の事務分掌に関連する災害対策業務に関することを担う旨定められている(同9頁)。
 このほか、同様の事例は、東日本大震災の被災自治体である宮城県議会においても見て取れる。同県議会では、事務局の対応に関するマニュアルを定めている一方で、地域防災計画では随時、県の災害対策本部を応援できる態勢を整えておくこととしている(宮城県防災会議「宮城県地域防災計画〔地震災害対策編〕」(2018年)192頁)。また、議会独自の会議体を設置しない同県議会では、東日本大震災発生後、各議員がそれぞれ地元市町村の災害対策本部にオブザーバーとして参加するとともに(宮城県議会『宮城県議会震災記録誌~東日本大震災発災から3年間の宮城県議会のあゆみ~』(2015年)52頁、160頁)、2013年6月に改正した「大地震発生時申し合わせ事項」の中で、副議長又は第一会派の代表を県の災害対策本部にオブザーバーとして参加させ、加えてそれに事務局職員を随行させる旨定めている(同69頁)。
 なお、執行機関側の災害対策本部に議員が参画している事例の一部を表1にまとめた。

表1 市災害対策本部に議員が参画している事例表1 市災害対策本部に議員が参画している事例

 この点について、災害対応に関する自治体議会独自の会議体の存在を地域防災計画上に位置付けるか、地域防災計画上の市の災害対策本部事務から事務局を除外することのほかに、また、事務局の地域防災計画上の位置付けは、現状、議会独自の会議体における事務局としての役割との整合性が図られていない議会も見られることから、その整合性をしっかりと意識して取り組んでいくことが求められ、少なくともこれらの点について、議会側が議論しておくことは最低限求められるものと考える。

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宇佐美淳(法政大学大学院公共政策研究科博士後期課程2年)

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宇佐美淳(法政大学大学院公共政策研究科博士後期課程2年)

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