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2017.10.25 議会運営

第29回 議員が寄れば文殊の知恵か……委員会

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議会事務局実務研究会 大島俊也

 自治体議員の皆様、こんにちは。第29回目の今回は、「委員会」についてです。以前にも本連載で取り上げたテーマですが、前回とは少し違う根本的な疑問や特殊なケースについて答えてみたいと思います。

委員会って、設置しないといけないの?

女性

 委員会を設置せず本会議のみとすることもできます。地方自治法(以下「自治法」といいます)109条1項は「条例で、常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会を置くことができる」と規定しており、あくまで「できる」ものですから、「しなければならない」わけではありません。
 では、なぜ、ほとんどの自治体議会が委員会を設置しているのでしょうか。それは、本会議だけでは不便だからでしょう。本会議だけで議案などを審議するとなると、出席議員数は委員会に比べて3倍から4倍以上になります。「三人寄れば文殊の知恵」とはいいますが、議論するメンバーが20人、30人ともなると「船頭多くして船山に登る」感が強くなり、収拾がつきません。また、複数の委員会を同時に開催して効率的に議論を進めるようなこともできなくなります。
 ところで、予算・決算議案を審査する委員会は全議員が参加することとしている自治体議会もあり、それなら本会議と何が違うのかと思う方もおられるかもしれません。その理由としては、本会議と委員会では議事運営の決まりごとが違い、例えば発言通告制を厳格に適用する傾向にある本会議で委員会のように質疑応答をするのはとても不自由だからということが挙げられます。このような理由から、全議員参加の委員会は設置されています。

常任委員会と特別委員会は、何が違うの?

女性

 常任委員会は、自治体の事務について調査し、条例案や請願・陳情を審査するため、常に設置しておく委員会です(自治法109条2項)。多くの場合、執行機関の組織(局、部など)に応じて委員会の所管事項は決められています。もっとも、そうしなければならないという制約はなく、理屈上は別の区分けでもかまいません。
 特別委員会は、議決で付託された特定の案件を調査・審査するため、それに必要な期間内のみ設置するものです(自治法109条4項)。代表的なものとして、予算・決算議案のほか、再開発や防災など複数の常任委員会の所管事項にまたがる案件や自治体が抱えている重要案件が挙げられます。
 つまり、大きな違いは、常設か一時的な設置かということです。常任委員会は常設ですから、条例案などの議決を終えても、あるいは議員が4年の任期を終えても、なくなることはありません。一方、特別委員会は特定の案件の調査・審査が終われば消滅します。
 しかしながら、予算・決算を審査する委員会を除く多くの特別委員会が、実務上は任期中ほぼ常設に近い状態のようです。考えてみれば、再開発や防災などの重要案件が短期間で結論が出るはずもありません。結果的に両者の区別はつきにくくなっています。

委員会や委員って、どうやって決めるの?

男性

 選挙が終わって新たな議員の顔ぶれが決まると、任期中の委員会をどのようなものにするか話し合います。主に各会派の代表者による話合いに、少数会派も入れるか代表者以外の議員も入れるかなどは議会によってまちまちです。常任委員会は前述のとおり執行機関の組織に合わせて決めることが多いのですが、福祉や建築・土木の部局は条例案などが多い一方、選挙管理委員会などは少ないという違いがあり、過去の付託議案などの分量も踏まえて区分けを決めます。一方、特別委員会は、その自治体にとってタイムリーなテーマが何かが重要です。改選前から変わらないテーマもあれば、新たなテーマもあり得ます。
 では、所属する委員は、どう選ぶのでしょうか。各委員会でどの会派が何人の委員を占め、委員長はどの会派から出すかという割り振りを事前に調整します。定数32の議会で常任委員会が4つあれば、各委員会の定数は8人ですが、ある委員会の委員8人が一会派のみの8人で占められたら議論になりません。満遍なく様々な会派の議員が入るようにバランスをとるわけです。結果として希望する委員会に入れなかった議員が、自分の意見を主張したい場合にどうするかは、本連載の第3回をお読みください。
 委員長の職は、議員であれば誰もが欲しい肩書でしょうが、通常、大会派で当選回数の多い議員に割り当てられるので、野党系の少数会派がなることは多くありません。ただ、委員長になると採決に参加できず、審査中も自ら質問や主張をしにくい立場になるため、あえて一委員として論戦を繰り広げるという選択をするベテラン議員もいます。

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議会事務局実務研究会

この記事の著者

議会事務局実務研究会

議会事務局実務研究会 2011年6月、元衆議院法制局参事の吉田利宏氏と町田市議会事務局調査法制係担当係長(当時)の香川純一氏の呼びかけにより発足。自治体議会事務局、国会事務局・法制局、国会図書館の職員及び経験者によって構成された実務家集団。会員が日常抱えている小さな疑問や課題を持ち寄り、それらについてオフサイトミーティング形式で意見交換、情報交換をしながら、実務の視点に立った研究実績を、論考、講演など各種のメディアで展開。全国の議会事務局のアドバイザー的存在として実績を重ねている。 大島俊也 おおしま・としや 議会事務局実務研究会会員、東京都墨田区職員。1996年墨田区役所入庁。議会事務局議事係(3年間)、高齢者福祉課、職員課、安全支援課、議会事務局議事調査担当(5年間)、産業経済課を経て、2017年より産業振興課。 林敏之 はやし・としゆき 議会事務局実務研究会会員、東京都立川市職員。民間企業(建設コンサルタント)での勤務を経て、2003年立川市役所入庁。2008年より2013年まで議会事務局。

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