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2017.08.10 議員活動

【セミナーレポート】LGBT自治体議員連盟2017夏の研修会

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 7月27、28日に豊島区役所で「LGBT自治体議員連盟2017夏の研修会」が行われました。この研修会は、7月、LGBTなど性的少数者が自分らしく生きられる社会を作ろうと当事者の自治体議員5名(石川大我氏(豊島区議)、石坂わたる氏(中野区議)、上川あや氏(世田谷区議)、細田智也氏(入間市議)、前田邦博氏(文京区議))が世話人となり発足させた「LGBT自治体議員連盟」が主催したものです。

 初日、会場には全国から80名近い自治体議員が集まり、学校現場で理解を深めたい、教育委員会を動かしたい、先進事例を学びたい、一般質問でまったく興味がない執行部の雰囲気を変えたい、施策の中に当事者の声を反映させたいなど、それぞれが抱える課題を持ち寄り研修会に臨みました。

 最初の世話人のあいさつでは、5名の議員がそれぞれの思いを語り、この研修会を日本のLGBT施策の歴史的な一歩としたいという願いが伝わってきました。


世話人あいさつを行う上川あや議員世話人あいさつを行う上川あや議員

「自治体におけるLGBT施策の現状と可能性」~第1講演~

 

 研修会の第1講演として、鈴木賢氏(明治大学教授・北海道大学名誉教授)から「自治体におけるLGBT施策の現状と可能性」と題する講演が行われました。鈴木氏は、札幌で1996年から続いていたセクシャル・マイノリティのパレードである「レインボーマーチ」始め、札幌市において本年6月1日から施行されている「札幌パートナーシップ制度」の呼びかけ人でもあります。

 現在、自治体におけるパートナーシップ制度は、6自治体で行われていますが、鈴木氏は、札幌市の制度の特徴として、6自治体の中で唯一同性に限定せずに戸籍上の性別が異性であっても宣誓できるという点を挙げました。また、制度を渋谷区のパートナーシップ条例のように条例で行うか、世田谷区や札幌市のように要綱で行うかについては、要綱の方がよりスピーディに施策を推進することができるのではないかと指摘しました。

 さらに、鈴木氏は、一橋大学法科大学院生アウティング訴訟等のLGBTに関する裁判でも当事者や当事者家族を支援しており、自治体の施策と司法の判断の双方のルートから国の立法に影響を与えることが大事であることを強調しました。

「自治体におけるジェンダー・人権施策の進め方」~第2講演~

 

 第2講演として、鈴木秀洋氏(日本大学危機管理学部准教授)から「自治体におけるジェンダー・人権施策の進め方」と題する講演が行われました。鈴木氏は、文京区職員だった頃に携わった「文京区男女平等参画推進条例」について、条例策定の背景や内容、施行後の取組みについて紹介しました。

 本条例には、禁止事項として、7条1項に「何人も、配偶者からの暴力等、セクシュアル・ハラスメント、性別に起因する差別的な取扱い(性的指向又は性的自認に起因する差別的な取扱いを含む。)その他の性別に起因する人権侵害を行ってはならない」とあります。鈴木氏は、この条例の根底にあるのは、憲法13条の個人の尊重・同法14条の法の下の平等であることを強調し、性的自認・性的指向の問題は、どういうパートナーと人生を歩んでいくか、自分は何者なのかという意味で、人権の中でも中核に位置付けられるのではないかと指摘しました。その上で、男女の捉え方というのは、時代の変遷とともに緩やかで多様な捉え方が要請されているとし、本条例はそのようなグラデーションの時代に生まれたものであることを強調しました。

 条例制定後は、施策の具体化、実効性の担保に向けて、職員研修、中学生への出前講座の実施、教職員向けの対応マニュアルの作成、相談窓口の設置、支援団体との後援・共催事業の実施等、理解を深めるための様々な取組みが行われたことを紹介しました。講演の最後に、本条例1条の「互いの違いや多様な生き方を尊重する社会を次世代につなぐために」という規定を掲げ、ありのままで安全・安心に生きられる社会の実現に向け、まだまだやるべきことは沢山あるとし、LGBT議員連盟に期待したいと締めくくりました。

「渋谷区におけるLGBT施策の取組み」~第3講演~

 

 第3講演として、長谷部健氏(渋谷区長)から「渋谷区におけるLGBT施策の取組み」として、渋谷区の「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例(通称:パートナーシップ条例)」の策定までの過程とその後の運用や啓発活動について説明がありました。長谷部氏は、自身が20代の頃旅行先のアメリカでゲイやレズビアンが普通に街を歩いている光景を目の当たりにした経験や、民間企業で働いていたときに出会ったトランスジェンダーの人との思い出から、当時、日本でも慣れさえすれば人々の意識は変わることなのだろうと感じたと語りました。

 区長になってからは、「ダイバーシティ」(多様性)を重視しており、基本構想に「ちがいをちからに変える街」を掲げていることを紹介しました。さらに、長谷部氏は、渋谷区のLGBT施策は当事者だけではなく、マジョリティの意識の変化を求める取組みであることを強調しました。

 

 自治体のLGBT施策は、渋谷区のパートナーシップ条例制定以降、確実に大きなうねりになっており、「LGBT自治体議員連盟」の継続的な取組みや、今回の研修会を受けた自治体議員が各地で政策や施策を推進し、国による法制度化を強力に後押しするものと思われます。


会場入り口に飾られたLGBTの象徴となるレインボーカラーの傘会場入り口に飾られたLGBTの象徴となるレインボーカラーの傘

 

『議員NAVI』編集部

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『議員NAVI』編集部

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