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2015.06.25 仕事術

第1回 新連載スタート!なかなか聞けない議会の不思議に答えます!

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議会事務局実務研究会 大島俊也
林敏之

 自治体議員の皆様、初めまして。新連載『みんなの議会事務局!』では、自治体議会に関してなかなか人には聞けない、あるいは聞きづらいことや、一般的な教科書には載っていないようなことを中心に、筆者が議会事務局に在籍していた経験談を交えながら、『議員NAVI』サイト上の議会事務局としてお話ししていきたいと思っています。第1回目の今回は、議会独特のマナーや明文化されていないような慣習、ルール、初めて議員になったときに生じるであろう素朴な疑問などについて取り上げます。

自治体議員になったら気をつけた方がいいことはありますか?

女性

 住民は、議員が想像する以上に、議会や議員に対して厳しい目を向けている、ということは認識しておいた方がいいかもしれません。
 「年に4回しか会議がないのに、いい給料をもらっている」、「議員の数が多すぎる」などの住民からの批判は、昨今よく報道されるところでもあります。議員というのは住民からは何をやっているのか分かりにくい存在であり(1)、また、いろいろな理由をつけては難癖をつけられる対象になりやすいといえます。
 以前、筆者がある本会議の傍聴受付をしていたとき、傍聴席から出てきたひとりの男性から「特定の議員しか発言していないんだな。ほとんどの議員は税金泥棒だよ」と言われたことがありました。「本日は一般質問の日ですので」と丁寧に説明をし、一応の理解をしていただけましたが、今度は「本会議がないときにも毎日議会に出勤するべきだろ」と、さらなる批判の展開が……。説明責任を果たしていないような議員も、中には確かにいるのかもしれませんが、「議員」というだけでひとくくりに批判の対象になってしまいがちであるというのが悲しいところです。
 予算提案権を持つ首長と違い、議員は選挙で掲げた公約をすぐに実現させようとすることは困難です。そのため、住民に活動や実績を訴えづらく、また住民もそれを知る機会がなかなかありません。議会改革の一環として根づきつつある議会報告会の開催や議会の映像配信は、このような状況を改善しようとする手段のひとつといえます。

 それから、自治体議員の仕事とは別な仕事を持っている方が気をつけるべきことは、地方自治法92条の2に規定されている、いわゆる「兼業の禁止」です。自治体議員はその自治体に対し請負することを禁止しています。詳しい説明はここでは省きますが、自分の自治体と取引がある個人又は法人の役員に名前を連ねている場合は、気をつけましょう。
 なお、NPO法人についても、この規定は適用されます。よくあるのが、福祉関係のNPO法人に無報酬で役員になっていて、その法人が当該市町村からの仕事を多く請け負っているようなケースです。「自分は無報酬だから関係ないや」と役員として名を連ねていることを忘れてしまっている議員も多いようですが、注意が必要です。判断に迷う場合は議会事務局にご相談されることをお勧めします。

(1) 有権者が地方議員に抱くイメージは、「何しているか不明」が56%で最多となっている。「地方議会は有権者にどのように見られているのか?」(早稲田大学マニフェスト研究所2014年調査。参照 http://www.maniken.jp/gikai/date/140807LMresearch_PR.pdf)。

自治体職員に対して何かを頼んだら、パワハラになってしまいますか?

男性

 何かを頼んだら即パワハラということにはなりませんが、執行部側との窓口は、課長職とするのがベターです。
 「市の施策について知りたいのですが、誰に聞いたらいいでしょうか」。当選直後の議員から、少し小さな声で聞かれたことがありました。基本的には課長級の職員が議員との窓口になる自治体が多いようですので、まず課長に連絡して、照会したい内容を伝えれば、おそらくは資料などを持って控室に説明に来てくれます。
 積極的な議員は、直接窓口に行って実務担当者を捕まえて聞いていることもありますが、実は、これは執行部側としては少し困ってしまうときがあります。管理職がそのことを知らなかった場合、その後の議員からの問合せにスムーズな対応ができなくなるおそれがあるからです。議員と担当者との間のやりとりは、できれば管理職も一緒に聞いていた方が、その後の議会での質問時に的確な答弁が得られますし、お互いにとってメリットがあると思います。また職員によっては「議員からの問合せ」と聞いただけで必要以上に萎縮してしまい、純粋に市政について問い合わせただけなのに、何かを強要されたと誤解される可能性も否定できません。痛くもない腹を探られるのはもったいない話ですので、執行部への照会事項については、できれば課長等の管理職を通じた方がお互いにいいのではないかと思います。

 また、他自治体の施策で知りたいものがあれば、まずはご自分の議会事務局に照会しましょう。「○○市で実施している面白い施策があったので、○○市の△△課に直接電話して聞いたら、『次回からは議会事務局を通してくれ』って言われちゃってさあ」と、ある議員がぼやきながら調査の依頼をしに事務局に来たことがありました。
 議会事務局の仕事には「調査」というものがあります。調査担当者は県内でネットワークを持っていることが多く、お互いに議員の依頼を受けて調査したり、事務局で独自に調査を行い最新事例の収集に努めています。議員の依頼を受けると、担当者は県内各自治体あるいは対象の自治体に対し、調査照会をします。照会を受けた自治体の議会事務局はすみやかに回答するよう努めています。たまにすごくタイトなスケジュールで回答期限を切ってくることもありますが、「ああ、突然の照会ですぐの回答を迫られてしまったんだろうなあ」と照会する側の心情を理解しながら何とか対応することもあります。事務局職員同士は「お互い様」という意識が強いのです。
 ちなみに、「議会事務局を通してくれ!」と言われた場合には、あまり意地を張らずに事務局を通した方が、庁内や関係者向けに作成した冊子などが余っていた場合に、分けてもらえたりするので、いいことが多いと思います。他自治体とはいえ「議員」といわれると、必要以上に警戒したり態度を硬化させたりする可能性もありますので、ぜひ自分の議会の事務局を活用しましょう。

本会議には、絶対に出席しなければいけませんか?

男性

 本会議は、議員としての活動を最もアピールできる重要な場です。現在、ほとんどの市町村議会が定例会を年4回行っています。議員としての活動の根本は議会にあることを鑑みると、本会議を欠席することは議員活動の根本を否定することにもつながりかねませんので、全員出席することが基本です。ただ、議員も人間ですので、体調によってはどうしても欠席せざるを得ない場合もあります。インフルエンザに罹患(りかん)したまま出席し、首長以下管理職が皆感染するような事態になってしまっては、笑えません。なお、出産についても多くの議会では欠席理由が「事故」との扱いでしたが、2015年6月26日に、「出産」を理由とした欠席理由が標準市議会会議規則に加えられたことから、今後各自治体で規則の改定が進むものと思います。
 さて、欠席ではなく、中座したい場合はどうしましょうか。学校で授業を受けていた頃を思い出してください。我慢できない事態にまで発展したトイレには、授業を抜け出しても行かざるを得ませんね。ちょっと恥ずかしいから人目を避けて、忍んでいく感じだったではないでしょうか? 何らかの緊急事態になった場合も、教室をこっそりと出ていきませんでしたか? つまり議会もそういうことです。さて、では議長や委員長がトイレに行きたくなった場合、どうするでしょうか。副議長や副委員長に急きょタッチしますか? もちろんそれもありですが、議事進行の権限を握っていますので「暫時、休憩します」の一言を発し、そそくさと目的を達成する方法もありなのです。

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議会事務局実務研究会

この記事の著者

議会事務局実務研究会

議会事務局実務研究会 2011年6月、元衆議院法制局参事の吉田利宏氏と町田市議会事務局調査法制係担当係長(当時)の香川純一氏の呼びかけにより発足。自治体議会事務局、国会事務局・法制局、国会図書館の職員及び経験者によって構成された実務家集団。会員が日常抱えている小さな疑問や課題を持ち寄り、それらについてオフサイトミーティング形式で意見交換、情報交換をしながら、実務の視点に立った研究実績を、論考、講演など各種のメディアで展開。全国の議会事務局のアドバイザー的存在として実績を重ねている。 大島俊也 おおしま・としや 議会事務局実務研究会会員、東京都墨田区職員。1996年墨田区役所入庁。議会事務局議事係(3年間)、高齢者福祉課、職員課、安全支援課、議会事務局議事調査担当(5年間)、産業経済課を経て、2017年より産業振興課。 林敏之 はやし・としゆき 議会事務局実務研究会会員、東京都立川市職員。民間企業(建設コンサルタント)での勤務を経て、2003年立川市役所入庁。2008年より2013年まで議会事務局。

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