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2015.04.10 仕事術

好感力アップの情報戦略 議員のためのメディア・トレーニング(上)

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広報コンサルタント/日本リスクマネジャー&コンサルタント協会理事 石川慶子

 メディア・トレーニングとは、マスコミや世論の現状を把握し、記者会見やインタビューに対してスムーズに対応できる能力を育成する訓練のことです。記者からのどんな辛辣な質問や誘導尋問にも的確に対応することで、理解・信頼・好感を勝ち取ることを目的としています。平時におけるイメージ向上と危機発生時のイメージ損失を最小限に抑える効果があります。アメリカでは、政治家や企業トップ、広報担当などのスポークスパーソンは必ず受ける訓練として定着しています。日本では上場企業役員クラス、大学、官公庁で認知が広がってきています。具体的な訓練内容は、記者とのやりとりと見え方に重点を置いたチェックリストがありますが、今回は、見え方、好感度を高めるための注意ポイントを中心に解説します。

好かれることは情報戦略の一環

 「人に好かれなくても理解されなくても黙って自分の職務を全うすればそれでよい」とする考え方があります。職人であればそれでよいと思いますが、議員という職業の場合には、説明責任を果たすことで理解され、信頼されることが職務そのものではないでしょうか。
 では、記者から好かれる必要はあるのでしょうか。あります。なぜなら、平時における好感度が高い方がダメージに強いからです。このことは各種データからも実証済みです。例えば、平時の好感度が高いとちょっとした失言でも許される、言葉が足りなくても言外の意味をくみ取って良いように理解しようとしてくれます。特に記者たちから好かれると、プラスイメージの報道記事が多くなる、記者からも情報を得ることができるといったメリットがあります。記者たちから好かれることは情報戦略の一環なのです。

好感を持たれる態度の基本5項目

 人間には幸いにも言語でコミュニケーションできるという能力がありますが、正確な言葉を使ってもなかなか相手に思うように気持ちが伝わらない、相手に好印象を与えられなかったと感じることは多いのではないでしょうか。それもそのはずで、心理学の世界では、外見や声の調子の方が相手に対するメッセージ力があるというのが常識になっているのです。メッセージ力の正確な数値は、外見が55%、声の調子が38%、言葉が7%です。これは、1967年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校心理学教授アルバート・メーラビン氏がコミュニケーションに関する研究を行った結果です。外見というのは顔とは限りません。態度、姿勢、視線、表情、ゼスチャー、服装のすべてを含みます。それにしても、言葉によるメッセージ力がたったの7%という結果に驚いてしまう方は多いかもしれませんが、ここから分かることは、相手に伝えようと思ったら、言葉だけでなく、全身で伝えることが必要だということです。
 「好感を持たれる態度」の基本5項目は、〈表情〉〈態度〉〈姿勢〉〈服装〉〈ヘアメイク〉です。〈表情〉は、真剣で明るいまなざしにします。口は引き締めて、歯を見せないようにします。会った途端に白い歯というのはちょっと議員としては軽すぎるからです。〈態度〉は、息を深くして落ち着いた態度にします。動作をゆっくりとすると落ち着いて見えます。〈姿勢〉は、背筋を伸ばし、正しい姿勢にします。〈服装〉は、その場にふさわしい清潔感のある服装にします。どんなに急なインタビューでも清潔感の演出だけは心がけます。〈ヘアメイク〉は、服装と同じく清潔感がポイントです。顔をしっかり見せると清潔感は演出できます。女性の場合は、その場にふさわしいメイクをします。
 では記者に「好感を持たれる態度」とはどのようなものか、取材対応をベースに詳しく見ていきましょう。

姿勢が良いと自信にあふれているように見える

 姿勢が良いとどれだけ得をするかご存知でしょうか。背筋をまっすぐ伸ばしているだけで堂々として見えるため第一印象がとても良くなります。反対に背中が丸まっていると自信がないように見えるため、信用できない、明快でない、うそをついているのでは、といった感情を相手に抱かせてしまいます。では、正しい姿勢とは、どのような状態のことなのでしょうか。実際にポーズをとってみましょう。
 男性は足を肩幅くらい(20〜30㎝)の位置で自然に開きます。女性はかかとを閉じるか少し前後にずらします。かかとはしっかり床に着け上下・左右に動かさないようにしましょう。お腹は引っ込め、あごを引いて胸を張り、背筋を伸ばします。肩と手の力は抜いて力まないようにします。手の位置ですが、立っている場合は自然に垂らします。座っている場合には前に軽く重ねます。手や指は不必要に動かさず、無駄な遊びをなくします。
 肩を一度上にあげて下ろし、胸を張って、お腹を引っ込める、このプロセスを繰り返すことで誰でも確実に姿勢は良くなります。

背筋はピーンと背筋はピーンと

好感を持たれるアクション

 私は10年間映像演出の現場に立ってきました。その後、日本人経営者だけでなく、海外の経営者、ゲームクリエイター、俳優、映画監督、スーパーモデルなど様々な方々へマスコミ取材を設定してきました。その経験に基づいて「記者から好感を持たれるアクション」の基本項目を下記に整理してみました。

自分から声をかける

 取材を受ける前から記者の名前は分かっているはずです。そこで、記者が来たら、「○○さんですね」と名前を呼んで声をかけましょう。ねらいは記者をリラックスさせるためです。記者は大抵ひとりで会社に来て取材をするわけですが、うまく相手から聞きたい情報を聞き出せるか、あたかも敵陣に乗り込むような緊張感を持ってきています。
 そこで、自分の名前を呼ばれれば、ほっと緊張がほぐれ、親近感を持ってもらうことができます。ここで目をしっかりと合わせて、アイコンタクトすることも忘れないようにしましょう。必ず第一印象は良くなります。

あごを引き締める

 あごを上げると冷たい感じを相手に与えますので、特別な目的がない限り、あごは引き締めましょう。

腕を組まない

 腕を組むのは、相手を受け入れないサインになります。反対に、腕を下ろし、心臓を相手に向けるのは、相手を心から受け入れるサインになります。そこで両手を広げたゼスチャーで語ることができれば、メッセージ力は高まります。記者懇談会といった非公式会見などの場合にはジャケットのボタンを外すとよいでしょう。オープンマインドな態度を感じさせ、信頼感を演出することができるからです。

記者の名前を時々呼ぶ

 取材を受けている最中に、時々記者の名前を呼びましょう。メモをとっている手を休めて取材対象者の顔を見上げますので、そこで目が合い、目と目のコミュニケーションができます。議員、特に首長ともなると取材をたくさん受けるため、記者一人ひとりの名前や顔を覚えていないことが多いのです。記者もそのことは分かっていますが、自分の名前を呼ばれれば、「ああ、自分の名前を覚えてくれたな」とうれしくなるのです。

腕を伸ばして届く距離に座る

 腕を伸ばして相手に触れることができる距離に座りましょう。近づいて場所を共有すること、時間や空間を共有することは、とてもコミュニケーションにおいては大切なことです。1時間でも2時間であっても同じ時間と空気を共有することはひとつの出会いであり、人生の記憶になります。広い部屋でよそよそしく接するのではなく、思い切って近づきましょう。近づいた分だけコミュニケーションは深くなります。
 また、対面して座るのではなく、90度の角度で接することができると、より親近感が増します。

握手でエネルギーを送る

 握手は確実に記者からの好感度を上げます。選挙活動でも握手は行いますが、取材対応の握手は全く性質が異なりますので注意が必要です。選挙活動中に行う有権者との握手は「私を応援してください」というお願いの意味合いがありますが、記者との握手は、「お願い」ではなく「対等」な立場で行います。ですから、握手も相手の目をまっすぐ見てゆっくり、堂々と行ってください。
 外国人記者の場合には、握手は必ず行ってください。握手でなくても、相手の目をしっかり見て、エネルギーを送ることができればよいので自分のスタイルをつくっていきましょう。
 首長や議員は選挙活動で握手をしていますので慣れていると思いますが、記者の側からはなかなか握手はできないかもしれません。握手でなくても、相手の目をしっかり見て、エネルギーを送ることができればよいでしょう。いずれにせよ、自分流のエネルギーの送り方を決めます。
 好感を持たれるアクションを自分がどれだけ実行しているか、チェックしてみましょう。
□取材前に記者の名前を覚えて、自分から声をかけているか
□あごが上がっていないか
□心臓を相手からそらしたり、腕を組んだりしていないか
□ソファに深く腰掛けて態度が横柄になっていないか
□記者の名前を時々呼びながら、話を進めているか
□腕を伸ばして届く距離で話をしているか
□最初、若しくは最後に握手をしているか

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石川慶子

この記事の著者

石川慶子

広報コンサルタント/日本リスクマネージャー&コンサルタント協会理事 有限会社シン取締役社長、日本広報学会理事、日本リスクマネジャー&コンサルタント協会会員。東京女子大学卒業。国会職員として参議院事務局勤務後、1987年より映像制作プロダクションにて、劇場映画やテレビ番組の制作に携わる。1995年より広報サービス会社のマネジャーとして記者会見、ウェブコミュニケーション、危機管理広報等のサービスを提供。2003年会社を設立して独立。現在は企業・行政・学校に対し、平時・緊急時の戦略的広報の立案やメディア・トレーニング、広報部門育成のためのコンサルティング等を提供。著書に『マスコミ対応緊急マニュアル─広報活動のプロフェッショナル』ダイヤモンド社(2004年)がある。 ホームページ:http://ishikawakeiko.jp/

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