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2017.08.25 政策研究

大震災における議会の使命~震災時~

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公益財団法人地方自治総合研究所主任研究員 今井照

発災直後(初動期)

 「震災前」、「震災時」、「震災後」に分けて大震災における議会の使命を整理している。今回は「震災時」について考える。震災時についてはさらにその中を分け、「発災直後(初動期)」、「避難期間(初動期経過後)」、「復旧・復興期」の順でまとめていくことにする。
 地震や津波などで大きな災害が発生したり、そのおそれがある場合には、市町村に災害対策本部が設置される(災害対策基本法23条の2)。東日本大震災の場合には14時46分に地震が発生し、記録によれば被災地自治体の多くがその15分後の15時前後に災害対策本部を設置している。本部長は市町村長がなると法で決められている。
 具体的には、あらかじめ防災計画などで決められている部屋に役所の幹部が集まり、第1回の災害対策本部会議が行われる。ここで災害対策本部の設置が確認されると役所の組織は、当面の間、平時の行政組織から災害対策本部の組織に移行する。防災計画に従って、例えば平時は市民課の業務をしている組織が避難者への食料調達班になるのである。
 東日本大震災の場合には、最初に強い地震があったので、まずはそれぞれが身の回りの安全を確保し、揺れが収まった段階で第1回の災害対策本部会議が開かれている。地震が激しかったところでは庁舎の外、例えば駐車場などで最初の会議が開かれている(写真1。その場に津波が襲って多大な犠牲者を出したところもある)。庁舎内で開催できる場合でも、停電になってしまい、なおかつ非常用電源が作動せず、予定していた部屋が使えない自治体もあった。また3月中旬は確定申告の受付けがあり、本来、災害対策本部が設置されるべき大会議室が使用できなかったところもある。このように、災害対策本部の設置ひとつをとっても、現実には想定外のことが多々起きる。

写真1 地震直後、庁舎前の駐車場で開かれた第1回災害対策本部会議(南相馬市役所)写真1 地震直後、庁舎前の駐車場で開かれた第1回災害対策本部会議(南相馬市役所)

災害対策本部への参加

 このような役所の災害対策本部に議会として参加するかどうかが最初の論点になる。前回紹介した報告書(都市行政問題研究会「『都市における災害対策と議会の役割』に関する調査研究報告書」2014年2月)によれば、調査対象119市議会のうち、「議会事務局長が参画している」が74で最も多く、次に「参画していない」が38、「議長が参画している(オブザーバーとしての参画を含む)」が6、「副議長が参画している(同)」が2となっている(複数回答)。
 ただし、議会事務局長は議会を代表してというよりは、災害対策本部体制の下で行政職員のひとりとして参加している可能性が高い。このように考えると、役所の災害対策本部に議会組織として関わっている自治体は少ないと思われる。また、災害対策本部は緊急時の実働部隊という性格があるので、議会としては関わるべきではないという意見もありうる。
 一方、議会独自で災害対策本部を設置する規程や要綱を持っている市議会は14ある(調査対象119市議会の12%)。議長や副議長を中心に各会派代表、若しくは常任委員会代表などで構成されることが多い。町田市議会のように常設の機関としているところもある(任期2年)。
 役所の災害対策本部と議会との関係について、どのようなことがいえるだろうか。まず議会独自の災害対策本部は設置するべきであり、そのためにあらかじめ規程等を整備し、議員だけで運用できるように訓練をしておく必要がある。ただし、議会の災害対策本部は役所の災害対策本部とは性格が異なる。なぜなら、議会には役所の職員のような実働部隊が存在しないからである。議会の災害対策本部の実働部隊は議員そのものである。したがってその役割は、まず緊急時における議会組織内部の管理や運営となる。安否確認を含む議員間の情報連絡網の構築や当面の行動予定などを協議する場である。災害対策本部というよりは「災害対策会議」と称するべきかもしれない。
 しかし、役割はそれにとどまらない。議会の災害対策本部は役所の災害対策本部のサブシステムとしても期待される。地域にとって役所の情報網が広くて大きく、さらに信頼できることは疑いないが、緊急時にはそこから漏れる情報も少なくない。災害時にはこのことが生命の安全に直結することがある。
 例えば、孤立して深刻な状況に陥っている地域について、あるいは緊急に支援が必要でありながら避難所にも行けない弱者の存在など、役所の情報網から漏れる地域実態は無数に存在する。また支援の供給側についても、例えば地域内で支援可能な企業や物資の供給元など、あるいは県や国、さらには政治的なルートでの県政や国政とのつながり、あるいは地域外の経済界や文化界などとのつながりなど、議員こそが持ちうるネットワークがある。これらから得られる情報や支援活動を議会の災害対策本部として集約した上で、役所の災害対策本部とリンクさせ、被害を最小化させることができる。
 したがって役所の災害対策本部には、議会として参加するべきである。ただし、緊急対策を実施する実質的な機能を持たないことから、対策本部の一員というよりはオブザーバーとして議長が参加するという方法でよいのではないか。この場合の議長は議会の災害対策本部と役所の災害対策本部との情報の結節点という役割が期待され、集約される情報を交換して災害対応の実働に生かすことが求められる。

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