一般社団法人共同通信社編集委員兼論説委員 諏訪雄三
森友学園への国有地払い下げの問題と、学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡る問題という一連の「もり・かけスキャンダル」、そして犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法の採決強行で象徴される通常国会が6月18日に閉会した。
一連の国会審議などで浮かび上がるのが、安倍晋三首相の1強状態を象徴するような官僚や側近の忖度(そんたく)、擦り寄りの姿、そして「すべては首相が指示している」「次の首相候補はなかなかいない」と国民に思わせる「印象操作」である。
官邸主導
とにかく、安倍首相は忙しい。首相官邸のホームページにある新着情報で6月前半の仕事ぶりを見ると、総合科学技術・イノベーション会議(2日)、経済財政諮問会議(2日)、国土強靱化推進本部(6日)、すべての女性が輝く社会づくり本部(6日)、持続可能な開発目標(SDGs)推進本部(9日)、経済財政諮問会議・未来投資会議合同会議(9日)、健康・医療戦略推進本部(14日)、宇宙開発戦略本部(16日)を開催している。
政治主導、官邸主導でこの国を引っ張っているという演出もあって、政府内の主要な意思決定は、安倍首相の指示を受けて行われるという形式を墨守している。
例えば、6月9日の合同会議では「成長と分配の好循環を拡大していくため、働き方改革の実行に加えて人材への投資を通じた生産性の向上を図る。また、イノベーションをあらゆる産業や日常生活に取り入れ社会課題を解決するSociety 5.0の実現を図る。そのために必要な取組をどんどん具体化してまいります」と述べている。
もちろん、これらの言葉は、首相の発言に向けて官僚たちが練り上げていくものだ。いくら首相とはいえ、すべての事象に精通し自らの判断で、的確で独創的な指示を出すことが難しいことは自明の理だろう。
各省庁は、実現したい政策を進めるには、官邸主導ということもあって、首相の指示、お言葉をいただかなくては始まらない。会議で首相に、前向きな発言してもらうため、各省庁の官僚たちは首相官邸、つまり首相やその側近に食い込むことを最優先に考えている。