地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

条例REPORT

2016.06.27 政策研究

新潟県特定野生鳥獣の管理及び有効活用の推進に関する条例〜住民ニーズを踏まえた議員提案による部局横断型政策条例の意義〜

LINEで送る

自治体学会会員/新潟県議会事務局 滝本直樹

1 はじめに

 新潟県議会は、平成26年12月定例会において、議員提案により発議された「新潟県特定野生鳥獣の管理及び有効活用の推進に関する条例」(以下「鳥獣条例」という)を全会一致で可決した。鳥獣条例に係る委員会審議状況を報じた地元紙の新潟日報は、野生鳥獣の管理、さらには捕獲した鳥獣の有効活用を盛り込んだ条例は、全国初と報じている(1)。また、平成28年2月には、鳥獣条例11条の規定に基づき、平成26年度における野生鳥獣の管理及び有効活用に関する施策の実施状況が県担当部局から公表され、条例に内在された鳥獣被害対策に係る取組状況を把握するシステムも稼働し、検証を踏まえたさらなる施策の充実が期待されている(2)
 本稿では、条例提案件数において、圧倒的優位を誇る首長提案ではなく、議員提案により発議し、制定した鳥獣条例の背景、経緯等について概観するとともに、部局横断型政策条例とも称される鳥獣条例の意義と地方議員の役割などについて考察を試みることとする。
 なお、本稿中に示す見解は全て筆者個人の私見である。したがって、所属する組織の見解を示すものではないことを申し添える。また、本稿作成に当たっては、新潟県議会自由民主党議員団鳥獣条例プロジェクトチームの皆様から様々な教示をいただいた。この場を借りて深謝申し上げたい。

2 条例制定の背景及び意義

(1)構造面からの考察
① 野生鳥獣に関する関係法令

 鳥獣に関する法律としては、環境省所管の「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(以下「鳥獣保護管理法」という)と、議員立法により成立した「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」(以下「鳥獣被害防止特措法」という)を挙げることができよう。
 鳥獣保護管理法は、都道府県を中心とした鳥獣保護管理事業、狩猟免許や捕獲の許可等の制度について定めた法律であり(銃を使用する猟については、鳥獣保護管理法に基づく銃猟免許に加え、銃砲刀剣類所持等取締法に基づく銃所持許可を要する)、我が国の鳥獣に関する法制度として、明治期の制定時(3)より、時代の多様な要請を受けて数度の改正が行われている。なお、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」という題名は、第186回通常国会で可決・成立し、平成26年5月30日に公布された「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律」により、改められたものである。当該一部改正法では、法の題名を改めたほか、法律の目的に、「鳥獣の管理を図ること」を加えるとともに、都道府県知事が、地域における種の状況に応じて策定する計画について、目的を明確化し、「保護に関する計画」(第一種特定鳥獣保護計画)と「管理に関する計画」(第二種特定鳥獣管理計画)に分けるなど施策体系の整理を図り、さらに、網猟免許及びわな猟免許の年齢制限の引下げ(20歳未満から18歳未満に引下げ)などを規定した。また、当該一部改正法は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行(一部の規定除く)することとされ、平成26年11月21日に公布された「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」により、その施行期日は、平成27年5月29日とされた。当該一部改正法の成立・施行により、鳥獣対策は、従来の保護のための管理から、より積極的な個体群等の管理を実現するための法整備が図られたと評されている(4)
 一方、鳥獣被害の深刻化・広域化を踏まえ、平成19年12月に、現場に最も近い行政機関である市町村が中心となって様々な被害防止のための総合的な取組に対して支援すること等を内容とする鳥獣被害防止特措法が議員立法として制定されている。こちらも平成24年3月に、新たに対象鳥獣の捕獲等をはじめとする被害防止施策の実施に要する費用に対して、国等が財政上の措置を講ずる旨を明記するなど、鳥獣による被害防止対策を効果的に推進できるよう所要の改正が行われている。
 なお、鳥獣保護管理法は、都道府県単位で、生息数が著しく減少し、又はその生息地の範囲が縮小している鳥獣(第一種特定鳥獣)の保護に関する計画や、生息数が著しく増加し、又はその生息地の範囲が拡大している鳥獣(第二種特定鳥獣)の管理に関する計画を立てることができ、主に環境部局が担当している(たとえば、筆者が属する新潟県の担当課は県民生活・環境部環境企画課である)。一方、鳥獣被害防止特措法については、市町村単位の協議会に対する財政的、人的支援、捕獲許可の権限移譲などを行うことが可能で、主に農林水産部局が所管している(新潟県の担当課は農林水産部農産園芸課である)。鳥獣保護管理法と鳥獣被害防止特措法という野生鳥獣に関する主要な関係法令を、所管部局という切り口で考察した場合、国の省庁の所管を考慮し、新潟県同様多くの地方公共団体で異なる部局が担当している現状を踏まえれば、鳥獣被害対策は、部局横断型の政策課題である(5)といえよう。

② 部局横断型政策課題への対応
 筆者が属する新潟県においては、県知事が平成25年2月6日の定例記者会見で、副知事を本部長とする「新潟県鳥獣被害対策本部」を設置する旨発表を行った。その際、設置に至る経緯として、県議会から質問という形で要望が出されていた旨発言している(6)。事実、県知事による当該対策本部設置発表前の直近1か年の定例会(平成24年2月定例会〜同年12月定例会)のいずれにおいても、本会議あるいは委員会審議の場で、後に鳥獣条例を立案し発議することとなる自由民主党の所属議員のみならず、同党とは異なる党会派に属する議員を含め延べ9人の県議会議員が、選挙区に関係なく(特定の地域から選出された議員に偏ることなく)鳥獣被害対策に関する質問を行い(7)、執行部の迅速な対応を促していたところである。
 部局横断型の政策課題については、多くの識者あるいは行政関係者が指摘するとおり、執行部間の消極的権限争いが発生しやすい環境にある(8)ことを踏まえれば、その解決に向け、現場の状況を把握し、多様な住民ニーズを拾い上げることができる地方議員の活躍の場は、さらに拡大していくこととなろう。

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る