弁護士 太田雅幸
1 政治の世界におけるハラスメントの問題性
政治の世界におけるハラスメントは、①それに屈した職員による行政のゆがみの起因となること、②女性の政治参画の阻害要因となること、③公務員や議員スタッフの働きづらさの原因となること等いくつかの側面でその弊害がある。自治体の政治倫理条例上の議員の政治倫理基準の一つとして「ハラスメントをしないこと」が規定されるに至っているゆえんである。
①については、例えば、議員が職員の職務執行に対する不当な介入をし、教育委員会事務局の幹部職員が議員におびえて不正に職員給与を支払い、刑事事件に発展した事案(2019年)も報道されている。
②は、こんな職場はもうこりごりだと政治の世界から引退してしまう女性を生んでいる。
本稿は、主に、③の「働きづらさの原因」という側面にフォーカスして、議会におけるハラスメントを考えてみたい。
2 ハラスメントの現況等
まずは、パワーハラスメント(以下「パワハラ」という)について。
パワハラは、この10年以上、労働相談件数のトップを占め、現在、相談件数の約4割が「いじめ・嫌がらせ」となっている。パワハラは、パワハラという言葉が社会に定着する前から、裁判でも問題となってきた。
公務の現場を見ても、市役所の課長が、上司に当たる部長職が部下に当たる課員に対して苛烈な暴言を吐くことに心を痛め、赴任後1か月で自死をしたという事案がある。その遺族である妻が公務災害の申請をしたところ審査機関から除外認定されたため、その取消しを求めた事件。最終的には、パワハラと自殺との因果関係を認定し、除外認定を取り消す判決が出た。
また、ある市の水道局の職員が同僚や上司からいじめを受けた事案──これは、この職員の父親と水道局とのトラブルにも起因するところがあったようであるが──では、ナイフを突きつけられ、卑猥(ひわい)な話をされ、また、その部屋にあたかもいないかのように扱われる等のいじめが半年近く続き、心因反応を患い、異動させてもらったが、結局、死を選んでしまった。この間、上司も適切な対応をしなかった。遺族が市に対し損害賠償を請求し、一部認容された。
パワハラに関する事案は、政治の場でも起きている。官僚出身の与党の代議士が秘書に対し「死ねば? 生きている価値がない」などと暴言を吐く様子の録音・録画が報道されて世間の耳目を引いた(2017年)。地方政治においても事案が発覚して、議員に対する辞職勧告決議や、議員のハラスメント禁止に特化した条例が出現している。