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論評

2015.08.10 政策研究

地方創生、問われる国の本気度〜知事側に目立つ「陳情」〜 安倍政権との距離感は

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一般社団法人共同通信社編集委員兼論説委員 諏訪雄三

 「地方創生から日本創成へ」をキャッチフレーズにした全国知事会議が7月28日から2日間の日程で、岡山市で開かれた。会議では、日本創成に向けてとする「地方創生宣言」、国に必要な支援策を求める「緊急要請」、各都道府県が取り組む約200項目の政策を盛り込んだ「行動リスト」のいわゆる3点セットを決定した。
 昨年夏に佐賀県唐津市で開いた知事会議では、人口減少問題を「国家の基盤を危うくする重大な岐路」とした「少子化非常事態宣言」をまとめ、安倍晋三政権に対策を迫ったといえる。
 これを受け、今回の地方創生宣言は「国と車の両輪となって地方創生を成し遂げ、日本創成をしていく」との決意を示した。注目したいのは、①地方創生関連の新型交付金について、2014年度補正予算で措置した1,700億円を大幅に上回る規模で創設する、②政府関係機関の地方移転について国が自ら「少なくとも2割を移転」という数値目標を設定する―という2点を強く求めたことだ。

上から目線

 知事会議は山田啓二会長(京都府知事)が「地方が問われている。実践が問われている。地方からもう一度日本をつくり直す。地方創生は新しい日本をつくるパラダイムシフトでなければならない」と宣言、最初は高揚感を持って始まった。
 その後の議論をテーマ別に集約すると、東京一極集中問題では、舛添要一東京都知事が「東京だけが全ての問題の源ではない。東京をやっつければ済む問題ではない」とけん制した。その上で、政府関係機関の地方移転については「出るとしても職員はマイホームの処理に困る。中古市場があれば簡単だが。塾に行かないと進学できない教育政策の破たんもあり、国の政策全体を見直す必要がある」と、国全体の問題として捉えるよう提案した。
 政府関係機関の地方移転では「2割移転」を要請することもあり「国が率先しろとはそういうことだ。あと国の出先機関を地方に任せることも進めるべきだ」(川勝平太静岡県知事)、「資本金10億円以上の法人のうち55%が東京都にある。移転について数値目標を出せないか。地方は総合戦略づくりで業績評価指標(KPI)の設定を求められている。国も出すべきだ」(湯崎英彦広島県知事)、「政府機関の率先した移転が企業の移転にもつながる」(村岡嗣政山口県知事)など厳しい意見が相次いだ。
 高齢者が健康なうちから地方に移り住み、医療や介護が必要になれば継続的なケアが受けられる「日本版CCRC」構想については「地方では医者、介護の要員が不足し、大都市では高齢者が増える。国全体でどう考えるのか示すべきだ」(溝口善兵衛島根県知事)と指摘した。
 少子化対策についても第2子、第3子を増やすため「フランスなどを参考に子どもの数が多いほど有利になる税制を考えるべきだ」(石井隆一富山県知事)、「子どもの数が多いほど年金を増やすという考え方もある」(泉田裕彦新潟県知事)、「子育て世代の負担が大きすぎる」(平井伸治鳥取県知事)など国に対応を迫る声が多かった。
 これらを包括する形で佐竹敬久秋田県知事は「国のスタンスが見えない。地域おこし、村おこしの事例しか示さない。地方創生という事実を小さく捉え、自治体にやる気と知恵を出せというのはどうか」と話し、地方創生の視点が矮小(わいしょう)化されていると指摘した。
 さらに「石破茂地方創生担当相は一生懸命だが、地方大学の交付金切り下げなどそれ以外の大臣からはまったく地方創生と反する動きがある。地方の方が知恵を持っているのに、国が地方創生のコンシェルジュを置くのも『上から目線』だ。国の本気度が分からない」と締めくくった。

「地方からもう一度日本をつくり直す」と語る山田啓二全国知事会長(京都府知事)「地方からもう一度日本をつくり直す」と語る山田啓二全国知事会長(京都府知事)

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