市とシティセールスの歩み
戸田市は、埼玉県の南東部に位置し、荒川の自然に恵まれ、江戸時代には中山道の「戸田の渡し」が設置されるなど、交通の要衝として栄えてきました。また、1964年の東京オリンピックをはじめ、各種国際大会や国民体育大会のボート競技会場となる「戸田ボートコース」や年間100万人以上が訪れる「彩湖・道満グリーンパーク」などがあり、水と緑あふれるオアシスのようなまちです。
市の人口は、国内人口が減少傾向にある中、昨年13万人を超え、今後もしばらく増加することが予測されています。加えて、平均年齢が39.7歳(2014年1月1日現在)と19年連続で県内一若く、さらに、池袋、新宿、渋谷などを経由するJR埼京線や首都高速5号線、東京外郭環状道路などの交通網を基盤として、印刷関連業や流通産業などを中心に産業も活発で、人の利と地の利に恵まれた、将来にわたって持続可能なポテンシャルの高いまちといえます。
反面、人口の流出入が著しく、年間におよそ1万人の人々が移動しています。こうしたことから、今後人口獲得を進めるだけではなく、まちへの愛着心を向上させ、長く住み続けていただくための定住策を講じていく必要があります。
地域を持続的に発展させるためには、地域の魅力を市内外に発信するとともに、本市が有する人材、物財、資金、情報などの地域資源を有効かつ効果的に活用していくまちづくりが求められます。そこで、本市では将来の理想的な都市像として「みんなでつくろう 水と緑を活かした 幸せを実感できるまち」と定め、各種施策に取り組んでいますが、とりわけシティセールスの推進に力を注いでいます。
まちの魅力を徹底分析
戸田市は、経営革新度調査(日本経済新聞社、2013年)で全国第8位になるなど、都市の基礎力で外部から高い評価を受けています。一方、本市の認知度は低く、魅力や住みよさなどが市内外に十分認識されていない状況です。そこで、まちの魅力を積極的にアピールしていくために、2011年に戸田市シティセールス戦略を策定しました。
同戦略の策定に当たっては、自治体シンクタンクである戸田市政策研究所で2008年度から研究を進め、シティセールスの必要性と成功する要件について分析しました。この中では、都市の認知度調査において全国的に認知度が低く、イメージ調査では平凡なまちとの回答が上位になるなど、明確な都市イメージを持たない都市との残念な結果となりました。そこで、シティセールスの推進に向けて、「認知度と都市イメージの向上」と「市民の誇り、愛着心の向上」の2つを目標として取り組んでいます。
また、まちの魅力を高めるためには、他自治体に勝る独自の売りが必要であり、地域資源の何をブランド化とするかが重要です。
表に示したとおりブランド対象物を基軸としたタイプにはいくつかの類型がありますが、首都圏に位置する本市の地域特性を勘案し、「居住地型」のシティセールスを進めていこうと考えています。しかし、居住地型は、他のタイプに比べてブランド化の対象が漠然としており、今後の課題としてはブランドの対象をより具体化するための検討が不可欠です。