はじめに
都議会や国会でのセクハラ差別やじ発言が問題になっている。実は、これまでも日本の国会や地方議会ではありふれたことといってもよいほどであったが、今回はマスコミや世論もこの問題に対して批判的な反応を示している。そして、この問題の根っこに、日本の議会において女性があまりにも少数派であるという事実が存在することに、ようやく気づき始めている。
本稿では、日本における女性の政治進出の現状を諸外国の状況と比較しながら紹介し、続いてなぜ日本では女性の政治進出が困難であるのかを分析する。次に、今日なぜ女性が政治的決定の場に進出する必要があるのかを論じるとともに、男性による政治と比べて女性による政治の特徴は何であるのかを説明し、最後に女性が今後政治進出するために必要な条件について論じたい⑴。
日本における女性の政治進出の現状とその国際比較
日本の国会議員における女性の比率は、衆議院で7.9%、参議院で14.0%である。世界各国の下院における女性議員の比率を比較している列国議会同盟の統計によれば、日本の下院(衆院)は189国中134位である。いわゆる先進国中最低であり、またアジアにおいても最低ラインである。地方議会における女性議員の比率については、国会についてのような包括的な調査はないものの、内閣府男女共同参画局による「諸外国における政策・方針決定過程への女性の参画に関する調査」によれば、日本の地方議会における女性議員の比率は全般的に欧米に比べて低いことが分かる⑵。一方、オランダ、ノルウェーなど国会における女性議員比率が高い諸国は地方議会においても同様の傾向がある。
日本の地方議会における女性議員の比率は、特別区議会の約25%から都道府県議会及び町村議会の8%半ばまで様々である。その原因は、都市化と選挙区制度にあると考えられるが、この点については後に触れたい。
ところで、欧米諸国において女性議員の比率が高いのは、それほど歴史が古いわけではない。図2のように、女性議員の比率が10%台から20%台、30%台へと上昇していくのは1970年代後半以後のことである。その契機になったのは、国連による女性の地位向上を目指した国際的な運動であった。1975年、国際連合はメキシコ・シティにおいて国連国際女性年世界会議を開催し、そこで採択された「メキシコ宣言」において男女平等を実現するための条件をつくり出すこと、すなわち政治においては議員の半数を女性にすることを国家の義務であるとした。この宣言からすると、図2が示しているのは、欧米諸国、特に北欧、ドイツなどの諸国がこの宣言に忠実であったのに対して、日本は何ら有効な手段を講じなかったことである。この態度の違いが、今日までに大きな差を生み出したのである。
首長について見るならば、初めての女性市長は1991年、芦屋市の北村春江であった。現職は14人であり、786全市の1.78%にすぎない。女性知事は2000年に大阪と熊本に誕生した。現在は2人(北海道、山形県)である。この点でも、欧米とは大きな隔たりがあるだけではなく、女性大統領・首相を生んだ韓国にも大きく遅れをとっている。