2026.05.25 New! 議会運営
第103回 本会議傍聴人の警察官への引渡し
明治大学政治経済学部講師/株式会社廣瀬行政研究所代表取締役 廣瀬和彦
本会議傍聴人の警察官への引渡し
本会議を傍聴していた市民が、本会議場で議案の内容について賛成といって騒ぎ立て、議長の注意にも従わない状況となった。この場合において議長がとるべき措置は、どのようなものが考えられるか。
本会議を傍聴するに当たっては、地方自治法(以下「法」という)130条に定める事項を遵守し、さらに議長が定める傍聴規則を守る義務がある。
法130条1項で傍聴人は、公然と可否を表明し、又は騒ぎ立てることは禁止されており、これを遵守しないと議長が注意し、それでも従わない場合は退場命令を下す場合がある。
ここで、公然と可否を表明するとは、傍聴人が議場に対し又は他の多数の傍聴人に対し可否の意見を表明することをいう。そのため、傍聴人同士で私語により雑談している場合は原則として含まれないと解する。
【法130条】
① 傍聴人が公然と可否を表明し、又は騒ぎ立てる等会議を妨害するときは、普通地方公共団体の議会の議長は、これを制止し、その命令に従わないときは、これを退場させ、必要がある場合においては、これを当該警察官に引き渡すことができる。
さらに、法130条1項における会議を妨害するとは、積極的に会議を妨害する意図をもって行われた場合だけに限らず、結果として会議の妨害をする場合も含むと解される。 このような行為に対し議長は注意し、それでも当該命令に従わない場合は退場命令を出すことができる。
この退場命令は、特定の者に対するものと傍聴人全員に対して出すものとの2通りあるが、議長が適宜判断してどちらを出しても問題ない。
この退場命令を出したにもかかわらず、傍聴人が議場から退場しない場合、議長は必要がある場合として、警察官に引き渡すことが可能である。
この場合、地方公共団体の議会の議長は、警察官に対し指揮命令権を有していないと解される。あくまで議長の秩序維持権として、法130条1項による警察官への引渡し権限を有している。
これに対し国会は、国会法114条で各議院の議長が院内警察権を有し、警察官は議長の指揮命令を受け、衆議院規則208条~210条及び参議院規則217条~219条による取扱い規定が存在する。
【国会法114条】
国会の会期中各議院の紀律を保持するため、内部警察の権は、この法律及び各議院の定める規則に従い、議長が、これを行う。閉会中もまた、同様とする。
【衆議院規則208条】
議長は、衛視及び警察官を指揮して議院内部の警察権を行う。
【衆議院規則209条】
① 衛視は、議院内部の警察を行う。
② 警察官は、議事堂外の警察を行う。但し、議長において特に必要と認めるときは、警察官をして議事堂内の警察を行わせることができる。
【衆議院規則210条】
議院内部において現行犯人があるときは、衛視又は警察官は、これを逮捕して議長の命令を請わなければならない。但し、議場においては、議長の命令がなければ逮捕することはできない。
【参議院規則217条】
議長は、衛視及び警察官を指揮して、議院内部の警察権を行う。
【参議院規則218条】
衛視は、議院内部の警察を行う。
警察官は、議事堂外の警察を行う。但し、議長において特に必要と認めるときは、警察官をして議事堂内の警察を行わせることができる。
【参議院規則219条】
議院内部において、現行犯人があるときは、衛視又は警察官は、これを拘束し、議長に報告してその命令を待たなければならない。但し、議場においては、議長の命令を待たないで、拘束することができない。
