2026.05.25 New! 仕事術
第35回 どうするボス議員①
ボス化した議員のビジネスモデル
一方、本格的にボス化したと思われる議員による贈収賄事件が最近報道されました。
一つは、八代市の事例です。本年5月7日に、被疑者である6期目の八代市議会議員が逮捕されました。被疑者は容疑を否認している段階ですから、その内容についてはあくまでも報道ベースでの理解です。報道されている内容を見ると、贈収賄の主役は市議会議員であり、金額も6,000万円と高額です。八代市役所庁舎の新規建設に伴い建設業者に便宜を図り、その見返りとして、現金を授受した模様です。市長には行政執行に直接の権限がありますが、市議会議員には基本的にありません。市議会議員として、市職員に対して特定業者に便宜を図るように促したことから、逮捕に踏み切ったようです。現在、地検にも送検されたようです。この案件について、八代市議会に設置された百条委員会でも、当該市議会議員から、市職員が特定業者に有利な条件を設定するなど便宜を図るよう圧力を受けたとの証言があるようです(1)。
もし報道が真実だとするならば、一介の市議会議員が市長を差し置いてそこまでの影響力を行使できたことに驚きです。こうした経過について本当に当時の市長は何も把握していなかったのか、あるいは当時の市長ですら是正できないほどの権限を有していたのか。もしそうだとしたら、まさにボス化していて、誰も逆らえない状況に陥っていたのでしょう。
一方で、やはり前市長や副市長も深く関わっていたという証言もあるようです(2)。
図 八代市庁舎建設をめぐるあっせん収賄事件の構図
もうボスではないけれど、期数を重ねた議員のビジネスモデル
同様に、千葉県成田市議会でも、成田市議会議員2人の関連会社へ、不動産ファンド「みんなで大家さん」の成田空港周辺の開発事業をめぐり、運営会社のグループから総額約10億円の資金提供が行われていたことが発覚しています。この不動産ファンドは、出資者に対して配当金を約束しておきながら、配当が行われていないことから集団訴訟が起こされています。この市議会議員の1人は8期目で、もう1人が3期目。この2人は同じ会派に所属しているようです。特にこの8期目の議員は、成田空港関連用地を大規模に所有する成田国際空港株式会社(NAA)とファンドとの仲を取り持っていたそうです。本年5月7日、成田市議会の超党派の議員が、この疑惑についての政治倫理審査会の開催を議長に求めたようです(3)。
この案件は、もしファンドによる配当金が適切に支払われていれば、問題化することはなかったのでしょう。いずれにせよ、今回のケースでは票というより、期数を重ねて得ることとなった重鎮議員という立場を利用しておカネを稼ぐビジネスモデルを確立したケースといえるでしょう。もっとも、この成田市議会のケースでは、2人の議員が所属する会派は4人の保守系の少数会派です。最大の保守系会派は14人ですから、議会内ではすでにボスとして君臨はできていなかったようです。地方議会では、一時は議長職に就くなどして権勢を振るった議員が次第に権勢を失い、保守系少数会派に凋落(ちょうらく)するというケースがよく見られます。少数会派になってしまうと、人事は冷遇されますから、一定の得票力を有する議員が蓄財に走る可能性は高まります。先ほどのA議員もリベラル系少数会派の所属でしたので、そういった志向だったのかもしれません。
職員からすると、議会内の権力構造は意外と見えにくいものです。議長などの要職を経験し、期数を重ねている議員については、議員との間に貸し借りの関係などが形成されていることもあり、議会内の権力とは別に、対執行部に影響力を有していることもしばしばあるようです。
