三つの壁をどう乗り越えるべきか
一つ目の「専門知識の不足」という壁は、議員向け勉強会などを活用することで乗り越えられます。所属政党・会派・議員コミュニティ・専門事業者などで開催されているケースも多いですが、テーマが限定的だったり、有料で政務活動費が少ない自治体の議員には参加が難しかったり、大都市でしか開催されておらず地域格差が大きいといった課題もあります。
そこでissuesでは、議会のない期間にはほぼ毎週、議員向け官民共創勉強会をオンラインで無料開催しています。地域課題の解決に取り組む社会課題解決型の事業を営む起業家や事業家から講師を募り、平日の昼間にQ&Aも含めて約90分間の講義を実施しています。2025年だけでも、病児保育、産後ケア、起業家教育、教育ICT、観光政策、関係人口づくり、若い世代を巻き込んだまちづくり、障害児支援、スポットワーク、保育士確保、EBPM(Evidence-Based Policy Making)、再生可能エネルギー、ポイ捨て対策、若者の政治参加など多様なテーマを扱ってきました。全国から毎回150〜200人近い地方議員が参加し、「担当課や民間企業と建設的な会話ができるレベルまで理解が深まった」といった声を多数いただいています。
二つ目の「行政側を動かす手法が分からない」という壁は、経験豊富な先輩議員に伴走してもらうことで乗り越えられます。本来は会派がそういった新人議員の教育機能を果たすべきですが、必ずしも全ての会派で適切なサポートが受けられるわけではありません。
そこでissuesでは、元議員や現職議員としてさまざまな官民共創プロジェクトを推進してきた議員経験者が伴走するサポート体制を構築しています。具体的には、先述の官民共創勉強会に参加した議員のうち希望者に対して、講師の起業家や事業家との個別オンライン面談を設定。議員経験者のスタッフが面談に同席し、担当課や財政課の動かし方、議会での質問の組み立て方などをサポートしています。特に新人議員ほど、「一人で悩まないこと」が官民共創を推進する上で何より大切です。
三つ目の「地元活動で出会う住民が偏りがち」という壁は、若い無党派層との接点を工夫してつくっていくことが大切です。しかし、現役世代は忙しく、地域の集まりに顔を出す層も限られています。対面の地元活動だけで若い世代の声を拾いきるには限界があります。
そこでissuesでは、20〜40代の地元住民から、さまざまな政策についての賛否や体験談を受け取れる仕組みを用意しています。無料でも一定のフィードバックを得られ、有料プランに加入すれば、数千人規模の住民に自分の取り組む政策を発信し、さらに多くの声を集めることができます。官民共創で進めているテーマについて、若い世代がどう感じているのかを定量・定性データで把握することで、地域住民にとって本当に良い形の社会実装を進めることができます。
おわりに
冒頭で述べたように、現代社会では社会課題が多様化・複雑化しています。そんな中、行政パーソン・企業人・課題当事者の住民などが単体で課題解決を推進することは難しくなっています。
しかし、地方議員の立場であれば、フットワーク軽く行政・企業・地域住民を巻き込む「課題解決プロデューサー」のような動きを仕掛けることができます。
私たちissuesは「政策づくりのDXでさまざまな社会課題を解決するプラットフォームを創る」ことをビジョンに掲げ、党派を超えて全国のさまざまな地方議員の皆さんと、多様な地域課題を解決してきました。これからもビジョンを共有できる地方議員の皆さんとともに、課題解決を進めていければと思っています。
