「新時代の息吹」を感じ大きくしよう
議会が、監視にだけではなく監査に関心を持つことは、議会力アップにとどまらず自治力アップにつながる。その視点から、法改正を含めた議論を巻き起こしたい。すでに、それを議論する実践の芽は育っている。
議選監査委員と議会の連携による議会力アップ、そして自治力アップを模索してきた。「新時代の息吹」を感じ、それをさらに充実させる手法を考えてきた。そのもう一歩を探りたい。
(1)監査委員を自治基本条例に位置付ける(監査委員に関する条例)
今日、可児市議会では、議会力と監視力の相乗効果を充実させるために、議選監査委員の選出と役割を明確にし、ルール化するために、それを議会基本条例に規定(改正)することを議論している。なお、監査委員の役割とともに、守秘義務の範囲を確定するために「監査委員基本条例」制定の提案もある(川上・前掲「今改めて考える議選監査委員の意義と使命⑤」)。その場合、行政委員会・委員に関する条例となる。
日本の地方自治の特徴は、二元制と執行機関の多元制である。前者の二元制は自治・議会基本条例に明記されている。執行機関の多元制については、ほとんど触れられていない。自治のルールを条例に明記することは早急に必要だろう(自治基本条例、行政委員会・委員条例等)。
興味深いことに、監査委員については、他の行政委員会とは異なり自治基本条例において明記しているものもある。それだけ、自治にとって重要であるという認識に基づいているからであろう。「監査委員は、市の財務に関する事務の執行及び経営に係る事業の管理の監査並びに市の事務の執行の監査をするに当たっては、事務事業の適法性及び妥当性のほか、経済性、効率性及び有効性の評価等を踏まえて行うものとする」(三鷹市自治基本条例26条)と定めている例がある。また、鳥取県北栄町自治基本条例では、章を独立させて「監査委員」を規定している(行政委員会・委員に関して、監査委員だけが取り上げられている。三鷹市自治基本条例も同様)。
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これらの動向を踏まえて、二元制を規定した自治基本条例とともに、執行機関の多元性の充実を規定した行政委員会・委員に関する条例制定を模索すべき時期に来ている。
(2)監査請求のハードルを低くする(地方自治法改正は必要)
本特集で確認した議選監査委員と議会との連携を踏まえれば、地方自治法上の監査委員制度を再考・改正する時期に来ている。
もちろん、議会に監査委員を設置することは理論上できるが、それには大幅な法改正が必要であり、長期的なテーマである。
そこで、暫定的な改革を想定したい。運用で議会側から行政監査を要請する必要性を指摘した。この実質化のためには法改正が必要である。議会による監査請求の議決を出席議員の4分の1以上とする制度化を模索してよい。衆議院には、予備調査権がある。国政調査権とは異なり強制力はないが、衆議院調査局や法制局に調査を命じることができる。これの作動に当たって、委員会による議決、若しくは40人以上の議員の同意で発議できる。これと類似した「議会による監査請求の議決を出席議員の4分の1以上とする」制度化に当たっては、地方自治法の改正が必要である。したがって、改正以前ではすでに紹介した「議会が議選監査委員に要請して行政監査を提案できるようなシステム」の模索は必要だ。
それだけではなく、実地検査権を議会が持つことは早急に検討すべきである。