十分な補償が受けられるのか
本目さよ〔議〕 地域クラブ活動の際に起こった事故に対する補償は十分なのでしょうか。
渡邉〔弁〕 先ほど申し上げたとおり、地域クラブ活動の場合、スポーツ安全保険に加入することになると思います。事故については、通常のけがであれば、基本的には保険に加入していれば補償してもらえるでしょう。
本目〔議〕 重症だったときには?
渡邉〔弁〕 柔道やラグビーといったコンタクトスポーツの場合、脊髄損傷といった重篤な状況が生じるおそれはあります。この場合、後遺障害に対して中学生以下の子どもに支払われる保険金は、最大で4,500万円ほどです。重篤な後遺障害が残るような場合、この金額では足りない場合も出てくるでしょう。
本目〔議〕 足りない分はどうなるのでしょうか。
渡邉〔弁〕 その場合、地域クラブや指導者を訴えるケースも生じてくると思います。
磯貝〔弁〕 地域クラブ活動に移行することで指導者個人が訴えられるリスクが生じるのは、負担が大きい印象です。
渡邉〔弁〕 これまで、被災者の方々の話を聞いていると、事故に関して学校側が事実を隠蔽するかのような行為をとり、これにより被災者側に不信感が生じることで、争いになるケースもあると聞いています。
滝口〔弁〕 部活動が地域展開した場合であっても、事故等といったトラブルが起きたときの対応は本当に重要だと思います。
指導者の質や量
江口元気〔議〕 指導者の質や量の問題というのは、具体的にどのようなことを指しているのですか。
渡邉〔弁〕 部活動の地域展開に伴い、地域において指導者を確保することが必要となります。これはいわゆる「量」の確保の問題です。
江口〔議〕 では、質については?
渡邉〔弁〕 指導者の量は確保できたとしても、指導の経験に乏しい地域の方が指導者になることで、指導者による暴力や暴言等といったハラスメントが問題となり得ます。
江口〔議〕 通常、どのような対応をすることになりますか。
渡邉〔弁〕 スポーツ団体では、指導者に対して資格を付与し、何か問題を起こした場合には当該資格を停止する等の措置をとることがあります。地域クラブ活動に当たり確保した指導者が、そのような指導者資格を取得していないときには、スポーツ団体が何らかの処分をすることで対応することができない、といった問題が考えられます。
江口〔議〕 問題のある指導者が野放しになるリスクがあるということですね。
大倉たかひろ〔議〕 指導者の質の問題ですが、現状でも品川区では、剣道連盟が各中学校に対し、部活動派遣員という形で指導者を派遣しています。
渡邉〔弁〕 そのような活動は、とても良いと思います。もし仮に派遣された指導者に何か問題があったとしても、スポーツ団体側が対応することが可能となります。
本目〔議〕 部活動の地域展開をすぐに行うことができない自治体であっても、専門の指導員を学校に呼んで指導してもらう形をとるのは、良い方法ではないでしょうか。
渡邉〔弁〕 はい。部活動指導員を置く方法は、スポーツ庁も選択肢の一つとして提示しています。
滝口〔弁〕 教師の立場で見てみると、部活動で生徒の指導をしたくて教師になった人もいますし、それが教員を務めるモチベーションとなっている人もいると思います。一方で、部活動への参加に消極的な先生については、自分の子育ての方が大事だと思うでしょうから、そのような選択肢ができることが重要だと思います。