なぜ「地域移行」なのか
滝口〔弁〕 部活動の地域展開が進められることになった理由について教えてください。
渡邉〔弁〕 少子化や人口減少の加速化が大きな理由です。中学生世代では今後30年で3割減少すると予測されており、中学校で現状の部活動を維持することが困難になると考えられています。教員にとっても部活動が大きな負担となっており、教員の働き方改革としての意義もあります。
石田しんご〔議〕 地域によっては、そもそも現状で部活動に人が集まらないという問題があります。少子化により、学校単位では部活動が機能しない。特に地方では、生徒の人数が減ったためにその問題は顕著に出ており、特にチームスポーツができない状況にあると思います。
部活動の地域展開の課題は何か
金岡宏樹〔弁〕 部活動を地域展開することで考えられる課題としては、どのようなものが考えられているのでしょうか。
渡邉〔弁〕 様々な課題が挙げられますが、私が考える課題としては、以下のとおりです。課題はたくさんありますが、今回はいくつかピックアップして議論したいと思います。
① 事故発生時の損害賠償責任
② 指導者の質や量
③ 地域クラブ活動を行うに当たって受益者負担とすることで、経済的に困窮している家庭に対してどのように対応するのか
④ 地域クラブ活動を行うに当たっての活動場所の確保
⑤ これまでに学校単位での参加のみが認められている大会において、地域クラブのチームが参加することの可否
⑥ 教員が兼業により地域クラブ活動にて指導を行う場合の対応
地域移行での自治体の役割は何か
石田〔議〕 部活動の地域移行において、自治体はどのような役割を果たしているのですか。
渡邉〔弁〕 基本的には、市区町村において、協議会を設置し、地域におけるニーズや課題を把握した上で、どのような運営主体が行うのが望ましいかを検討していきます。その上で、運営団体を確保し、また、具体的に地域クラブ活動を実施するために必要な指導者や活動場所等を確保し、生徒や保護者、住民らへの周知を経て、段階的に地域展開を進めていくケースが多いかと思います。
石田〔議〕 都道府県の役割を教えてください。
渡邉〔弁〕 都道府県については、基本的な方針を提示し、情報発信等を行いますが、地域によって実情が大きく異なります。基本的には、各市区町村が中心となって進めていることが多いようです。
石田〔議〕 すでに具体的に地域展開を進めている自治体はあるのでしょうか。
渡邉〔弁〕 様々な自治体で、すでに具体的に地域展開に向けた活動が進められています。私が知っている中で一例を申し上げると、静岡県の掛川市では、令和8年8月に中学校における部活動が全て終了し、その後は、新たに創設される「かけがわ地域クラブ」が主体となって地域クラブ活動を行っていく予定と聞いています。
千葉貴仁〔弁〕 すでに先進的な活動を行っている自治体もある一方、部活動の地域展開が進んでいない自治体もあると思うのですが、このように自治体によって差が生じている理由としては、何か考えられるのでしょうか。
渡邉〔弁〕 部活動の地域展開が進んでいない自治体については、地域展開に取り組まないという方針を明確に示しているのではなく、むしろ、どうやって進めていけばいいのか分からない、というのが実情ではないでしょうか。小さな市町村では、スポーツ協会も小規模で、実質的になかなか動けないため、運営主体となるのは難しい状況にあると思います。このように、それぞれの地方によって、整っている程度が全く違うといえます。