川上文浩 可児市議会議員/ローカル・マニフェスト推進連盟共同代表 .
子籠敏人 あきる野市議会議員/ローカル・マニフェスト推進連盟共同代表
識見監査委員の監査力アップ
江藤俊昭(以下、江藤):議選監査委員がいることによって、議会力がアップするという話をしてきました。
私が問題意識として持っているのは、議会からの政策サイクルです。歴史的な流れの中で、地方財政上、決算審査において監査との関係が大事であるという動きが出てきました。
もう一つのベクトルとして、議選監査委員がいることによって、識見監査委員、他の監査委員の機能も向上していく。さらに議会事務局との連携によって、監査委員機能が充実されるということもあるのでしょうか。
川上文浩(以下、川上):それは根本的にあると思います。特に常勤ではない包括外部監査も我々は義務付けられていませんので、まず、監査委員事務局が、どこまで常勤の職員として、常日頃から問題意識を持って各課の状況を調査するかということが大事になってきます。また、会計監査に関しては、事務局がしっかりとやってくれています。聞くところによると、会計監査を重点的に行う自治体もあるようです。それでは、行政監査など様々な項目の監査ができなくなってしまいます。可児市は、基本的に職員を中心にして会計監査を行い、その報告を受けて定期監査、決算審査に臨むという流れにしています。そのあたりが議選監査委員による行政の有効性を高めていると思います。
江藤:それぞれの役割があり、それによって相乗効果があるということですね。
川上:常勤の監査委員が複数いるような自治体では違ってくると思うので、バランスをとることが必要かと思います。
江藤:行政監査のときには議選監査委員の役割は大きいと思います。財務監査でも、決算を行っている議員は注意するポイントが分かりますよね。
川上:決算で大事なのは、各事業に対する内訳や不要額、つまり様々な原因によって発生する余剰金ですね。あとは基金をどう運用しているか。企業会計の内容と財務内容はどうなっているのか、そのあたりについて、監査委員が見たことを議会に伝えて共有しています。ある自治体で基金の運用に失敗して、20億円の含み損が確認された話もありましたが、基金をどう運用するかについては、きちんと監査委員が指摘して、それを議会に報告し、議会として考える必要があります。水道事業会計になると、基金を運用するためには議会の議決が必要となります。企業会計ですから。議会内では、基金を運用するなら水道料金を下げた方がいいなど、しっかりと議論をします。議会としても、方向を示してもらわないと、企業会計の会計担当とうまく運用できないということを、監査委員から報告させていただいて進めているところです。
子籠敏人(以下、子籠):当市の代表監査委員は税理士の方で、非常勤ですが、数字面にはとても強いので、しっかり見ていただいています。その一方、自分は定性的な面を確認するようにしています。例えば、財務監査のとき、現金の扱いはどのルールブックをもとに行っている行為なのかといった、例規関係のチェックに力を入れています。ルールブックが平成の初め頃につくられたままで現代に対応していないようなものであれば、後々のリスク要因になります。数字が合っていたとしても、気になることがあってルールブックの確認や担当課へのヒアリングをすると、明確な基準を持てていなかったり、しっかり決裁をとっていなかったりするケースが見つかることがあります。その場合は、数字面と定性面の両方から改善点を指摘していきます。また、こういう状況を引き起こしている要因は何なのかということについても、ヒアリングを通じて探ったりもします。例えば業務多忙で他の課と比べてとても忙しいことにより、うまく業務が回っていないのかもしれない、きちんと休みがとれていないかもしれない、というようなリスクの可能性も見えてくることがあります。すると残業時間を調べるというように展開できます。このコンビネーションは、全庁的に詳しい議選監査委員がいて初めて展開でき、深掘りもできます。議選監査委員の役どころは、こういったところにもあるのではないかと思います。