市民に開かれた監査
江藤:監査委員として実地検査をするということですね。また、PDCAサイクルとして、様々な報告書等を出しっぱなしにせず、チェックしていくということですね。市民に対する公開は、監査委員はあまりしていないですよね。今の問題意識をお聞きすると、今後、議会がそれを公開するようにするかもしれないですね。監査の力はとても強いですから、閉鎖的にやるのではなく。
川上:定期監査報告と連結出納、決算に関わるものは全て監査委員事務局のホームページで公開しているので、議会と同じものは入手できます。ただ、私が進めたいと思っているのは、監査調書までの公開です。これが公開できると、非常に分かりやすくなると思いますが、ハードルは高いですね。
江藤:市民のイメージでは、監査請求をしてもストップ(棄却・却下)されることが多いように思います。開かれた監査委員というのは、ほとんどないですから。
川上:監査請求を起こす前に相談されたこともありますが、この内容だと却下せざるを得ないというものが本当に多いです。調書の公表によって補える部分もあると思いますが、違法性がない限りは却下するしかないのですよね。
江藤:子籠さんのところは、いかがでしょうか。
子籠:当市では、代表監査委員と連動してどんどん展開しています。まず、監査委員会議の数が劇的に増えました。定期監査の前に行う予備監査の前後に、監査委員会議を開いて、事務局からのヒアリングをしたり、逐一進行管理をしながら、本監査で深掘りするところを決めたり、取り寄せる資料を決めたりと、質の高まりを感じています。当市の特徴は監査計画をしっかりつくり込むというところで、基本方針も10項目ぐらいあるのですが、代表監査委員が強く意識されているので、市民の視点に立って分かりやすく情報提供するという基本姿勢や、リスクアプローチなどについて、基本方針の最初の監査委員の役割のところなどにしっかり提示して、それに沿っていろいろなことを展開しています。
実査の面では、先ほど川上さんの話にもありましたが、当市の監査でも学校監査を取り入れて現場に行ってみると、様々なリスクが転がっていることが分かります。それを発見し、指摘して取り除くことを行っています。倉庫のことだったり、薬品のことだったり、お金のことだったり大小いろいろな指摘をしていて、様々なアウトプットがあり、どこから紹介してよいか分からないぐらいです。
江藤:素晴らしいですね。
子籠:学校監査以外でも小さな改革、大きな改革をいろいろ行っています。基本方針に、市民や職員に対して速やかに情報を公開することを明示しているので、定期監査を終えて担当課に報告書の写しを渡した直後にホームページにもアップするという、タイムラグをなくす体制もとっています。監査委員事務局のページにアップするとともに、市のトップページのお知らせにも掲載し、定期監査の報告が出たことが広く伝わるようにもしました。このトップページのお知らせ欄は、市内のイベントの案内やコミュニティバスの運休などの大事なお知らせが載るところで、ここに定期監査のお知らせも載るのです。すると関心のある市民はすぐに気がついて、報告書を見てくれるという流れです。
また、報告書に対し、どのような措置が行われたかということまでを載せるように変えました。地方自治法199条14項の規定に沿って、措置を講じたときには報告をしてくださいということを担当課へ渡したときに併せて伝え、公開することを前提に措置の内容について書いて出してもらうことで、措置の実効性の担保となります。出てきたものをそのままホームページに掲載するというのが基本姿勢です。
また、定期監査等の結果は、監査をする側と受けた側だけが知っていればよいのではありません。同じようなリスクは庁舎内の様々な部署に存在しています。例えば現金の扱い方にしても、全庁的に職員に意識してもらいたいという思いと、市民の方にも知ってもらうべきという思いがあるので、全てアップして、みんなに見てもらうことを意識して取り組んでいます。すでに取り組まれているところもありますが、他の自治体にも広がればよいと思う取組の一つです。
江藤:計画と指針をしっかりつくっているということ、そして監査委員と監査委員事務局が連携して行っていることが分かりますね。そして、公開は大事です。今のお話のように、ホームページに載せることで、なかなか監査のことが分からない市民に分かってもらえますね。
子籠:市民に読んでもらうことを想定すると、表現も分かりやすくしないといけません。議会ではよく、中学生が分かるようにといわれていますが、それと同じように考えて、なるべく分かりやすい表現にしています。それでもやはり特殊な用語はあると思うので、ホームページの監査のページで、議会のページによくあるような用語解説を付けることを事務局と検討しています。
(後編に続く)