議会と監査委員の新たな関係
江藤:新しい動きがネットワークの中で広がっていることが分かりました。しかし、議選監査委員は、評判が悪かったですよね。1年で交代するとか、一般質問ができないとか、上がりのポストだとかといった位置付けで、それならいてもいなくても同じなどといわれていて。そういう流れの中で廃止していったところもありますが、皆さんのところでは、しっかりと議会改革を行い、議会力をアップするために議選監査委員との連携を考慮して実践されていると思います。その議会はどういうところが違うのか、議選監査委員とのつながりはどうされているのかなどについて、教えていただければと思います。
川上:もともと、監査報告は、一定例会ごとに3か月分出される定期監査報告と連結出納を見るだけでした。議選監査委員を出したとしても、監査委員が何をやっているのかを知るすべはありませんでした。議会内で一般質問の規制は特になかったのですが、何となくやらないという雰囲気がありました。しかし、本来、議員になった以上、そういった制限を設けることは問題があると思います。
我々の議会には、予算決算サイクル、年間のサイクル、定例会ごとのサイクルなど、四つのサイクルがあります。その中で、様々な市民意見を取り入れたり、一般質問の所管事務調査部分を増やしていったり、委員会の代表質問をしたり、議会の報告会を行ったり、各種団体から意見聴取を行ったりしています。これらの情報をより細かく取得するために、監査委員が行う定期監査の調書を共有できないかということを考えました。現在では、定期監査報告については、調書から抜粋した要望事項等について、代表監査委員や議選監査委員と協議して監査報告の中に加え、議会に提出し、それを共有して予算決算委員会の中で質疑応答を行うという作業をしています。議会の監視機能を強めるための一つの情報源として、監査を利用してもらっているということになります。
江藤:今のお話では、予算決算委員会で説明しているということですが、決算審査をしっかりと行うために、事前に議選監査委員が情報を提供するということはしていますか。
川上:定例会ごとに行っていて、決算も当然やりますけれども、全定例会で予算決算委員会が開かれますので、委員長に招集をかけてもらい、そこで定期監査報告と出納報告を細かく行っています。
江藤:それは議選監査委員がですか。
川上:はい、代表監査人と協議して、議選監査委員にお願いしたいということになりました。ただ、本会議に呼ばれる場合は、代表監査人が出席するという2人の合議で進めています。
江藤:議選監査委員が話すとなると、ちょっと怖いと考える人もいると思うのですが……これは後で話しましょうか。守秘義務との関係があると思うのですが、そこはどのようにクリアされていますか。
川上:守秘義務については、協議して、調書から抜粋したものについての報告を控えています。その他の事項について監査委員事務局、監査委員の総意として定期監査報告の中に組み入れています。
江藤:合意しているところについて話していると。
川上:基本的には個人情報保護法に触れない部分です。触れる部分は載せませんが、触れない部分について全て載せているという形です。
子籠:当市では、連携についてはまだまだで、その前の段階の、限られた監査資源の中でどれだけ監査機能を高めていくかということに注力しています。
なお、先ほど可児市議会での例月出納の紹介がありましたが、当市議会では例月現金出納検査の報告については、議長から報告があるのみで、特段、資料配布などはしていません。
一方で、資料をしっかり提供しているのは、やはり決算の審査のところで、決算審査の意見書の内容の充実を図っています。決算監査を行った上で見えてきたことや、是正すべきことを個別意見で書くのですが、今まで数項目程度だったものが、10項目以上に増えています。例えば、土地の借上げ料について、あらゆる部署が土地を借りていて、昭和の頃から借りたままほぼ自動更新になっているために、結果的に取得した場合の額よりも高くついているというケースがあります。これは地方自治法でいう「最少の経費で最大の効果を挙げる」ことに逆行するのではないかなど、細かい点でも見えてきたものを加えています。それを見て質問する議員が出始めており、その面では良い方向に向かっていると思います。
決算審査の報告については、まだ道半ばですが、代表監査委員との協議の上、議選監査委員の私が、決算特別委員会へ議案を付託する際の手続のときに、審査意見書の個別意見に今回はこういうことを書きましたと、項目だけですが全て議員みんなに伝え、詳しくは意見書を見てもらいたいという発言をする機会を持つようにしました。
江藤:これは、本会議で行っているのですか。
子籠:当市の周辺の自治体で、本会議で行っていたので。当市議会の事務局や執行部の方も理解しやすく、まず臨んでみたところですが、可児市さんは委員会で行われていると伺っており、そのようにしていけたらなお良いと考えています。