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特集 今改めて考える議選監査委員制度

2025.02.10 議会運営

議選監査委員制度の現在地とミライ

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議会の監視と監査委員の監査との異同

 監視と監査を混同する議論が散見される。監視と監査は異なる(議員や議会は監査と関連はするが、監査権限を有しているわけではない。また、実地検査権などの権限も議会にはない)。監査委員は、執行機関に配置される他の行政委員会とは異なり、独任制(合議が必要な場合もある)である。こうした基礎知識は、本特集の中で指摘される。ここでは、〔議選〕監査委員と議会の協働を模索する前提として、監査委員の監査と議会の監視についての異同を確認しておきたい。

(1)監査と監視は異同──議会は監査に直接にはかかわることができない
 監査委員の監査については明確である。法定されているし、監査計画には明確に監査委員の監査対象が位置付けられている。議会は、議会の監視を監査委員の監査とは同列視できない。とはいえ、こうした監査委員の監査対象外を担うと単純に区分するわけにもいかない(監査は財務監査だけではなく行政監査も可能)。
 監査は法律で規定されている(1)。監査委員の監査権限と議会の監視権限の異同を確認すれば、表のとおりである。監査は法律で規定されているのであって、監査という用語は限定的に用いられる。監査の手法には、監査、検査、審査がある。監査は執行状況の事実性・妥当性を検証し、指導・助言の意味がある。検査は計数の成否を調べ、現状確認の意味がある。審査は計数の成否を確認し、判断を下す意味がある。
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表 監査委員の監視と議会の監視
 

(2)議会の監視機能の射程──監査委員の監査との関係
 議会は議決権のほか、検閲権(強制的意味はなく、事務執行状況を調べること、法的効力はない)、検査権(書類審査)、調査権(いわゆる100条調査権、「伝家の宝刀」といわれるが、使われるようになっている)を有している。議会は広範囲な監視対象を有している。そこで監査委員とは対象を異とする監視を行うことは当然である。監視と政策提言とは厳格に区分できない、というより連動している。予算、条例(制定時でも制定後でも)、そして行政組織全体を視野に入れた改革(首長直近組織条例、行政改革の基本方針等)などの事項は、議会が決定権限を有するという意味で(監査委員は違う立場からかかわることはできるし、かかわらなければならない)、監査委員と異なる議会の監視領域の主たるものである。
 もちろん、監査委員の監査対象と、議会の監視対象が重なる領域もある。監査委員の行政監査や決算審議は議会の監視領域と重なる。とはいえ、議会はその第一級の位置を占めている。監査委員が監査する素材を基にそれらに議会としてかかわることになる。もとより監査委員を含めた行政委員会・委員の同意・選挙や、その組織のあり方をも議論できる。議会の監視機能は、その意味で監査委員の監査を超えたものとなる。
 議会の監視対象は、監査委員の監査対象と重なる領域はあるが、その場合、視点を異にすること、及び、より広い領域にかかわることからすれば、議会は監査機能を発揮するのではなく、監査機能を含めた監視機能を発揮する。もちろん、監査委員の監査対象を議会がすべて担うという意味ではない。これらについては、議会の監査請求を活用することになる。要するに議会については、監査=監視ではないし、〔監査<監視〕と単純に捉えられるわけではない。ともかく、議会は監査機能の一部を含めた監視機能を発揮するといえる。
 アングルを変えてみれば、議会は独自の監視機能を発揮するとともに、監査委員の監査領域の中で、議会がかかわることができない(財政援助団体等)、あるいは、かかわることができる領域を意識して議会の監査請求、監査委員報告を活用することが必要である。これは議選監査委員の存置、廃止を問わず考慮しなければならない。

【附記】 本稿は、江藤俊昭・目黒章三郎・川上文浩・子籠敏人ほか「今改めて考える議選監査委員の意義と使命」地方財務2023年1月号~12月号での筆者担当部分の一部を修正・加筆した(本稿「議会の監視と監査委員の監査との異同」の節)。



(1) その際、監査要点の内容は、次のものである。実在性(記録された取引が実際に発生しているか)、網羅性(認識されるべき取引の記録に漏れがないか)、合規性(事務の執行が法令等に従って適正に行われているか)、経済性(一般財源をできるだけ節約しているか)、効率性(単位当たりの行政コストを縮小化できているか)、有効性(事業等が所期の目的(アウトプットやアウトカム)を達成しているか)、である。
 

 

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