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特集 今改めて考える議選監査委員制度

2025.02.10 議会運営

議選監査委員制度の現在地とミライ

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(2)新たな争点の浮上──議会力・監査力アップに活用できる環境
 今日、新たに議選監査委員をめぐる争点が浮上している。このことは、従来の議選監査委員の問題をあぶり出し、議会力・監査力を向上させる議論と連結する(させたい)。まず今日、議選監査委員をめぐる争点が浮上している三つの環境・背景を確認しておこう。

① 議会改革による議選監査委員と議会との連携の模索。議会改革はまさに第2ステージに突入している。議会基本条例制定に見られる議会運営の改革が第1ステージであるとすれば、それを活用して住民福祉の向上につなげる議会改革は、第2ステージと呼んでよい。議会からの政策サイクルの実践である。その展開の中で、地域経営の本丸、つまり総合計画や地方財政に積極的にかかわる議会が登場している。そこでは、議会力アップ(そして監査力アップ)のために議選監査委員と議会との連携が不可欠となってきた。こうした連携のあり方を探る争点が浮上する。

② 議選監査委員の制度改革(選択制)。議会改革の第2ステージという展開がありつつも、従来型の議選監査委員の活用では問題があるという系譜から、廃止とはいかないまでも、廃止も可能とする選択制(廃止する場合のみ条例が必要)が制度化された。従来の問題を引きずっているからという消極的な理由から、あるいは弁護士・公認会計士・税理士など専門家を配置するためという「積極的な」理由から廃止を選択した自治体もある。


 〔補足〕議選監査委員の安易な廃止は、地方自治にとっての二つの意味での武器を議
 会が手放すことになる。一つは、議選監査委員を中心に「監査」にかかわる論点を議
 会と連携することで、議会力をアップさせる議会にとってという意味での武器。もう
 一つは、議員が監査委員に入ること(議選監査委員の存在)で識見監査委員の視点や
 内容も豊富化されるという意味での武器である。これらの武器によって監査委員の監
 査・議会の監視は充実する。これらの武器を投げ捨てることは、議会力・監査力を弱
 体化させる。

  確かに、議員の身分を残したまま、執行機関の行政委員(監査委員)となるのは制
 度上変則だ。だからといって、廃止はあまりにも安易だ。制度上は、議会に監査機能
 の付与あるいは議会に(執行機関ではなく)監査委員を配置することも考えてよい。
 その制度化以前の議選監査委員の廃止は、「武器」の放棄になる。

 


③ 議選監査委員と議会との連携をめぐる制度と運用についての研究と実践のネットワークの誕生。議会からの政策サイクルが議選監査委員と議会との連携を必要としているまさにそのときに議選監査委員の選択制が浮上し、議選監査委員あり方、議選監査委員と議会との連携のあり方が問われた。それを模索するネットワークが生まれている。議会改革を積極的に進めている議会の議長などの要職を経験した議員が議選監査委員に就任し、積極的に議選監査委員と議会との連携を模索している。そのネットワークが生まれている。今回の特集は、このネットワークを基礎としている。


 〔補足〕議選監査委員と議会との連携についての研究はほとんどなかったし、実践も
 である。議会改革によって、監査の重要性、監査委員(議選監査委員)の役割、そし
 て監査委員と議会との連動が模索されている。今日は、その模索は構想だけではなく
 実践に突入している。議選監査委員の「登場」では事実に反しているし(すでに設置
 されている)、「目覚め」では弱い。そこで、筆者は議選監査委員の新時代の息吹と
 今日を位置付けている。その時代の到達点は以下を参照してほしい。江藤俊昭・新川  
 達郎編(2021)『自治体議員が知っておくべき政策財務の基礎知識』第一法規、江藤
 俊昭(2020)「議会の監視機能強化の一手法─議員選出監査委員の選択制導入を素材
 に─」山梨学院大学法学論集85号、江藤俊昭・目黒章三郎・川上文浩・子籠敏人ほか
 「今改めて考える議選監査委員の意義と使命」地方財務2023年1月号~12月号。

  また、ローカル・マニフェスト推進連盟主催の研修会等や「全国地方議会サミッ
 ト」(2023年、2024年)において議選監査委員と議会との連携についてのセッショ
 ンが開催され、その動向とさらなる一歩が模索された(筆者もかかわっている)。

 


(3)本特集の目的──議会力アップ・監査力アップ、その相乗効果のために
 本特集は、議選監査委員と議会との連携の最近の動向、正確には急激な進展を確認し、その進展による議会力アップ・監査力アップを目指すことを目的としている。結論を先取りすれば、議会力は議選監査委員との連携によって、例えば議会における決算審議が充実する(そのことで予算審議が充実する)。一方、監査力は議選監査委員との連携で、現場感覚を充実させ、具体的にはより現実的な監査や、行政監査の充実が可能となる。
 理論上は、議選監査委員だけではなく、識見監査委員との連携でも可能という議論は成り立つが、任命権(監査委員、事務局職員)、そして執行機関の保守的思考を考慮すれば、議選監査委員との連携をまずもって模索することが現実的だ。
 新たな動向を踏まえて議選監査委員の役割を再考し、監査委員機能、そして議会力アップに活用している動向を確認する。したがって、従来の評判の悪い議選監査委員のイメージ・実践から議選監査委員を安易に廃止することは問題である。議会、したがって住民自治の「武器」を手放すわけにはいかない。

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