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特集 地方議会と生成AI

2024.11.11 仕事術

議員活動で生成AIを使う方法

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首長botの作成

 これまで、地方議員を対象に、何回かの研修会を行ってきた。そこでよく出た意見として、ChatGPTの有料版を使っても、一般論の傾向が強く、自分の自治体の話になっていないというものがあった。これは、ChatGPTが持つデータベースに、日本の自治体の情報が蓄積されていないことがその理由の一つとして考えられる。
 この問題を解決するのが、「首長bot」を作成し、活用することであるが、これは、ChatGPTの「GPTs(カスタムGPT)」の機能を使うものである。その手順は、初心者の方には、やや難しいように思えるかもしれないが、一度できてしまうと簡単である。その手順を簡潔にまとめると、次のようになる。

  1. 首長botを作成する準備段階として、議会の会議録のページから、首長の発言集をダウンロードし、ファイル形式で保存しておく。
  2. ChatGPTの左側にある「GPTを探す」をクリックする。
  3. ChatGPTの右上にある「+作成する」をクリックする。そうすると、左上に、「新しいGPT」の表示が出るので、その下にある「構成」を選択する。
  4. 図2の画面になるので、図2を参照しながら、botの名前と説明、指示を入力し、「知識」の欄に、首長の発言集を読み込ませる。
  5. 右側にある「GPTにメッセージを送る」の欄に、具体的指示に内容を入力し、回答を確認する
  6. 回答の内容に問題がなければ、右上にある「作成する」をクリックする。
  7. 「GPTを共有する人」の画面が出るので、誰に公開するのかを選択し、「保存する」をクリックする。

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図2 ChatGPTのGPTsの設定

 これで「首長bot」が完成する。手順がやや複雑かもしれないが、分からない場合には、インターネットのサイトなどを参照していただきたい。この「首長bot」は、通常のChatGPTとは違い、読み込ませたファイルを参照して、出された指示に対する回答を作成するので、その自治体の固有名詞や特有の問題を踏まえた内容になっているはずである。それゆえ、議員の質問に対して、首長がどのように回答するのかをあらかじめ予測することに有効であると考えられる。実際に、ある議員が試したところ、答弁の6~7割程度が予測した内容であったそうである。
 また、このGPTは、様々なことに応用できる。例えば、地方議会で使われる用語を読み込ませれば、用語集ができるが、相模原市議会の阿部よしひろ議員は、「地方議会用語集BOT」を作成し、公開している

おわりに

 今回は、議員として生成AI(ChatGPT)を活用する方法として、(1)質問のブラッシュアップ、(2)一般質問の作成、(3)ペルソナの作成と議員間討議、(4)首長botの作成について見てきた。特に、(3)と(4)にトライされた方は、生成AIが持つ力を実感していただくことができたであろう。そして、思っていたよりも、ハードルは高くないと感じた方が多いであろう
 おそらく、ここ2~3年の間に、生成AIの能力は飛躍的に上がり、ここに書いたようなやり方は古くなるかもしれない。それと同時に、これまで議論されてきた地方議会の改革論も古くなるであろう。すでに、奥州市議会では、発言の文字起こしをその場で行い、それをリアルタイム配信している。これがさらに進むのであれば、首長が行った答弁をその場で生成AIが文字起こしと分析を行い、次にどのような質問をすればよいのかの案を提示させることが可能になる。議員がすべきことは、提示された案の中から、自分が良いと思うものを選択するだけである。また、反対に、議員が行う一般質問や質問にも同じことがいえる。そうすると、これまで、情報公開、住民参加、議会機能の強化を柱とした議会改革は、そのあり方や方法論を根本的に見直さなければならなくなるとともに、地方議会の役割とは何か、地方議員の役割とは何かを改めて定義する必要が生じるであろう。さらにいえば、二元代表制は現行の制度や運営スタイルでよいのかという地方自治や民主主義のあり方までを根源的に問い直すことも必要になろう。

(1) ChatGPTの有料版を使用するには、月額20ドル(2024年10月時点)が必要である。これを政務活動費として支出するためには、議会が策定する政務活動費の支出基準で定めておく必要がある。ただし、インターネットや携帯電話の使用料金のように、そのすべてを支出できるというわけではなく、按分する必要があろう。按分をどのように設定するかは、今後の課題である。
(2) 現時点では、無料版には、あまりに長い文章は一度に入力できないので、分けて入力する必要がある。ただし、有料版であれば、ファイル形式で読み込ませることが可能である。
(3) GPTの使い方は、インターネット上に紹介するホームページや動画があるので、これを参照されたい。
(4) 相模原市議会議員・阿部よしひろ「ChatGPTで『地方議会用語集BOT』を作成しました」(https://ab4.jp/?p=7532)。
(5) 生成AIをより深く学びたい場合には、次の書籍がお勧めである。橋本大也『頭がいい人のChatGPT&Copilotの使い方』(かんき出版、2024年)。

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