こうした活用によって、どのような議会改革につながるのか?
まず質問レベルの向上(質問力の向上)につながる。一人ひとりの議員の質問力が向上することで、他議員や職員へ影響が広がり、ひいては議会力の向上に資することができる。
さらに新人議員もレベルの高い質問が可能になる。従来であれば、新人議員は経験年数や知識量、ネットワークの豊富さが不足していたが、生成AIによって一定程度、カバーすることができる。これは議員のなり手不足問題の解消にもつながっていくだろう。
そして、様々な視点によるチェックで議案審査が機能していくことで、「追認機関」からの脱却にも近づく。最後に、これまで苦労していた質問の作成時間を効率化することができ、例えば多角的な情報収集や他自治体の事例研究など他活動に時間を使うことができるため、政策立案機能の拡充にもつなげることができる。
前述の鈴木議員ががんサバイバー支援に関連した質問を作成したきっかけは、ご親族の病気と、NPO法人の方の話を聞いたことだった。そのNPO法人の方の話を文字化し、さらにNHK「がんと生きる長い旅」という番組の内容を文字化するなど、膨大な量のテキストを効率的に処理する必要があった。そこでChatGPTにそのテキストを読み込ませて分析し質問を作成。さらに職員からのレクを受けて再度、内容を修正し質問をブラッシュアップしていった。その結果、従来では時間を要する質問作成のプロセスを短縮することができた。また、学校健診のあり方に関する質問では執行部側の答弁予測にも使用し、AIが約6~7割の精度で市の答弁内容を含んでいたという。
生成AIの利便性について、鈴木議員は「自分だけでは処理しきれない情報量を整理でき、非常に役立った」と述べている。現代の地域課題は、多様かつ専門性が高まっている。テーマによっては膨大な政策資料や議事録を扱う議員にとって、AIは情報の要点を抜き出して効率的な質問作成ができ、さらにより多様な視点を持つ議論が可能になる有効なツールであるといえる。