第3章 介護現場の視点から見た行政の課題と議員の成功実績
「政治と介護を紡ぐ会」副会長/茨城県小美玉市議会議員 山崎晴生
私は茨城県中央に位置する小美玉市の市議会議員で、介護事業所を運営する現役の介護支援専門員(ケアマネジャー)でもあります。
私は介護の専門職として、現場の課題解決に貢献したいという強い思いから政治の世界に足を踏み入れました。しかし、政治の世界は、議会のルールや行政の慣習など、想像以上に複雑なもので、現場で培った知識や経験が、そのまま政策に直結するわけではないことを日々痛感しています。
介護保険制度は、国や地方自治体の計画にのっとり運営されており、その枠組みを変えることは容易ではありません。しかし、制度の運用における裁量である「ローカルルール」(制度を運用する市町村ごとに書式や法令・通知の解釈が異なること)に注目することで、現場の課題解決の新たな可能性を見いだせるのではないかと考えています。
具体的には、介護関連書類の簡素化や情報提供の円滑化・無償化といった、一見小さな取組みでも、現場の業務負担を軽減し、ひいてはサービスの質向上につながることを実感しています。これは、専門職出身議員だからこそ、現場の視点と専門知識を生かし、制度の運用改善に貢献できたのだと考えます。
介護問題は、大介護時代を迎える日本における国難というべき社会全体の課題です。一朝一夕に解決できるものではなく、長期的な視点かつ自治体の実情に応じた取組みが求められます。専門職議員として、現場の声に真摯に耳を傾け、多様なステークホルダーと協力しながら、持続可能な介護サービスの提供を目指すまさに今が転換点だと考えています。
議員の皆様には、現場の声に耳を傾け、多様な主体と協力しながら、より良い介護サービスの提供を目指して取り組んでいただくことを期待します。
第4章 ネットワークや支援体制の重要性~介護職の経験はないが、介護について学びたい自治体議員の皆様へ~
「政治と介護を紡ぐ会」準会員/千葉県八千代市議会議員 飛知和真理子
介護問題は、自治体議員にとって避けて通れない重要なテーマです。この課題に取り組むためには、介護職の実態や具体的な課題を理解することが不可欠です。しかし、介護職の経験がない議員にとって、その理解は容易ではありません。ここでは、議員にとってのネットワークや支援体制の重要性について考えていきます。
(1)議員にとってのネットワークと支援体制の重要性
介護現場の実情を把握するためには、地域の介護施設を訪問し、職員や利用者の声を直接聞くことが重要です。また、介護に関する勉強会やセミナーに参加し、専門家の意見を聴くことも欠かせません。これにより、現場の声を政策に反映させることができます。
次に、議員が介護の課題に取り組むには、支援体制の強化が必要です。介護に関する知識や理解を深めるためのセミナーや勉強会の提供、他の議員との情報交換や連携を促進するプラットフォームが必要となります。
特に介護職を経験してきた議員との対話は、介護職と議員両方の視点を持ち、とても重要だと感じます。
介護職には専門用語も多く、地域ルールなどは本だけでなく、人との対話から学びや気づかされる内容も多くあります。
これにより、介護現場の課題やニーズを正確に把握し、適切な政策を立案することができます。
(2)「政治と介護を紡ぐ会」の価値
「政治と介護を紡ぐ会」は介護職を経験してきた議員が中心となり、介護現場の声を政策に反映させるための場です。会員同士の情報共有や連携を促進し、地域ごとの課題に応じた対応策をともに模索することができます。
私自身、地元や近隣の介護施設を訪問し、職員や利用者の声を直接聞く機会を得ました。この訪問を通じて介護現場の具体的な問題点やニーズを理解し、「政治と介護を紡ぐ会」のメンバーと情報交換を行うことで、効果的な施策を学びました。これにより、自分の自治体でも同様の施策を提言することができました。
(3)今後の展望
結論として、ネットワークや支援体制の強化を通じて、より良い介護政策を実現するために「政治と介護を紡ぐ会」を活用し、地元自治体で推し進めてまいります。