「政治と介護を紡ぐ会」とは
「明日、急に介護の世界は変わらない。2025年までに、介護を変える力もない。でも諦めたら厳しい状況は変わらない。だから、2040年までには、介護を変える。」をスローガンに、介護業界に関わる全ての関係者の将来を考え推進に寄与するとともに、会員相互の親睦並びに成長を図ることを目的として、2022年4月22日に設立しました。
本稿では、介護職の経験から感じた行政の課題、議員になろうと思ったきっかけなどについて、6人の仲間で執筆させていただきます。
第1章 はじめに
「政治と介護を紡ぐ会」幹事長/東京都江戸川区議会議員 神尾昭央
いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年問題が、いよいよ来年に迫っています。このことは以前から問題視されていますが、介護業界の環境は全く改善していません。例えば、働く環境は改善されない、処遇も向上しない、離職率が高い、深刻な人材不足、といった状況です。
いつか誰かが何とかしてくれるということは、絶対にありません。
介護業界から声を上げていく存在が必要です。地方議員である私自身が介護職として現場に入っていることが、議会活動でも大きく役立っています。実際の介護現場を知っているからこそ、他の議員にはない説得力や言葉の重みが出てきます。また、担当部署の行政職員と専門的な部分まで踏み込んだ議論をすることもできます。過去に介護業界で働き、その後、議員になったという人も少なからずいます。
しかし、私は現場に入り続ける「現役」という点にこだわっています。数年ごとに法律改正やルール変更が行われるため、過去の知識・経験だけでは、いずれ議論に取り残されてしまいます。常に現場に身を置いて、ブラッシュアップし続けることが重要であると考えます。
第2章 立候補のきっかけと当選後の苦労
「政治と介護を紡ぐ会」理事/千葉県長生村議会議員 諸岡なつき
私が地方議員を目指すきっかけとなったのは、『介護職よ、地方議員を目指せ!』(ともあ、2021年)という本に出合ったことです。本の宣伝という意味ではなく、きっかけとはどこにあるのか?
自分でも思ってもみないところから出てくるものなのだと思います。
私は立候補を決める前から、長生村で通所介護事業所やケアプランセンターを運営している会社の代表でした。私一人で立ち上げた会社ですから、運営はもちろん、行政とのやりとりまで一人でやるのが当たり前。必要な制度のことを行政の窓口に伝えても、本当に変わることがあるのかな? と思っていた一人です。
制度を変えていくきっかけをつくるには、一人の声ではなく、国に届ける仕組みをつくり、声を大きくしていくことが必要です。そのためにはどうしたらよいのか? それを教えてくださったのは、著者の一人「宮崎なおき」その人だったと思います。
選挙に出たいと周囲に相談したときに、反対という意見はなく、チャレンジしてみたら?という声の方が多かったのはとてもありがたかったです。
介護職から議員になる難しさは、私の場合、介護支援専門員(ケアマネジャー)として事業所の業務を担当していたことでした。仕事と議員活動の調整に苦労しました。
最後にお伝えしたいのは、「他の地域でも頑張っている仲間がいる」と思えることはとても大切なことだということです。よくニュースや記事になる、報酬の減算や厳しくなる要件の内容を一人で見ていると、つらくなってしまうのも正直な気持ちです。
だからこそ、他の地域でも自分と同じ、又は、それ以上に頑張っている人がいると感じることができると、「もう少し頑張ろう」という気持ちが湧いてくるのかなと感じています。
「政治と介護を紡ぐ会」正会員/岐阜県美濃市議会議員 渡辺あきのり
私が政治家を目指したきっかけは、二つあります。
一つ目は、祖父の存在です。祖父は長きにわたり、美濃市議会議員を務めていました。祖父の時代は、戦後の高度成長期の真っただ中で、美濃市という田舎でも雇用を創出できるよう、大きな企業を本社ごと美濃市に移転することに取り組んでいました。その取組みは今でも地域の人たちから感謝を伝えられます。そのようなことから、私は政治の世界が地域の人たちを幸せにできることを祖父から学びました。
そして二つ目です。それは私が介護、福祉の仕事に携わっているからです。現在私は、岐阜県と東京都で訪問介護、訪問看護、通所介護の事業を展開している会社の創業社長をしています。事業を開始して今年で11年になります。大学卒業以来ずっと介護の仕事をしていた私は、その仕事のすばらしさを知ると同時に、制度の矛盾、制度設計と現場のギャップにとても苦しい気持ちになりました。この不条理を解消し、日本が誇る介護や福祉の施策を持続していくためにも、現場の意見を届けなければならないという思いで立候補しました。
さて、立候補し、当選してからの苦労です。結論としては、今のところ苦労を感じることはほとんどありません。私は議員としての政治活動と会社の経営者としての活動の二足のわらじを履いています。しかし、会社の社員にも協力をしてもらい、うまくいっています。
だからこそ、介護、福祉の業界の方々にはもっと政治に目を向け、そして動き出してほしい、そのように思います。