「2025年問題」アンケートから見えてきた一騎当千の地方議員たち
では、ここからは私たちが何者で、何を目指しているのかを知っていただくために、現在進めている活動について紹介したい。それは、9月に開催するシンポジウム「どうなる介護 どうする地域」に向けて実施中の「2025年問題」へのアンケートである。
図らずもここから、地域で介護問題に取り組んでいる地方議員の実態が浮かび上がってきた。
アンケートは各議会事務局のホームページに公開されている所属議員のメールアドレスに直接送付。また、公開されていない場合は議会事務局宛に配布を依頼した。首都圏を中心に送付した議会総数は180~200、議員総数では2,000~3,000に上った(なお、数字に幅があるのは、「転送不可」と「無反応」の議会事務局が多数あったためである)。
締め切りの8月20日までに寄せられた回答は、73議会、122人であった。
これをどう見たらよいのだろうか?
対象議員数からすると回答率はわずか4~6%であり、当初は地方議員の「介護」の関心度はこの程度かと正直失望を覚えた。しかし、それは“早とちり”だった。
というのも、地方議会の比率からすると全体の3~4割もの回答があり、そこには少なくとも1人以上の介護問題に熱心な議員がいることが明らかになったからである。
ちなみに、10ほどの設問のうちの冒頭で、「『2025年問題』に対して特段の取組みをしているか」を質問しているが、「していない」の48人に対して、「している」が74人と6割を超えた。
先に前川喜平氏らの本会立ち上げの賛同人を“一騎当千”と評したが、アンケートに反応してくれた100人を超える議員たちも引けをとらない。彼らがいかに“一騎当千”なのかを証明するのは、「質問」に付記されたコメントである。それらは具体的かつこまやかで、さすが地方議員だけあって介護の現場に近い。裏金問題で政治家の品格が問われている国会議員とは大違いである。
紙幅の制約から、以下に二つ掲げる。
「本区社会福祉協議会介護福祉専門学校を設置。本区独自の修学資金貸付制度を制定しており、授業料140万円は卒業後、本区の指定する施設で3年以上介護業務に従事すると返済が免除となる。在校生の9割がこの制度を利用している」(東京都A区議)
「切り貼りのような施策ではなく、ため込み金の一部を活用し介護の充実を図れるはずだ、と予算の裏づけを示し公共バスの充実などを具体的に求めている。一見、介護の施策には無縁のように見えても、外出を楽しく安心にできることが介護予防に結び、結局、医療費の伸びを抑え保険料を引き下げるのだ、と」(東京都B区議)
これに対して、制度設計者である国は介護現場から何と遠いことか! そして、当事者への愛が何と欠けていることか! それは、以下の今般の介護保険の「改定」をめぐる「居宅介護支援における特定事業所加算の見直し」なる事務的コメントに明らかだ。
「多様化・複雑化する課題に対応するための取組を促進する観点から、『ヤングケアラー、障害者、生活困窮者、難病患者等、他制度に関する知識等に関する事例検討会、研修等に参加していること』を要件とするとともに、評価の充実を行う」
片や、本アンケートに回答を寄せた地方議員たちは、当事者たちに寄り添おうとする情愛と喜怒哀楽にあふれている。本アンケートでは、最後に「介護問題について意見と提案」を自由に記してもらったが、回答者の半数ほどから思いの丈が寄せられた。これも紙幅の制約から、二つを紹介する。一つは介護現場に近いがゆえの怒りのコメントである。
「今回の報酬引き下げはあまりにも露骨であり、施設系事業者、サ高住事業者に有利としか思えない。雨の日も風の日も、かっぱを着て自転車でご自宅を訪問し、時には認知症の利用者さんに『ドロボー』と怒鳴られながら、細切れの訪問介護を担っている方々(主に高齢女性)を軽んじているとしか思えない。地域に住むスタッフならではの地域密着型のサービス事業はもう不要、ということなのか?」(東京都C市議)
もう一つは、およそ国や政府には期待できない、当事者への思いがあればこその自省と自戒の弁である。
「民間がしているので、介護の問題は、市町村からは遠い。だから、議会でもさほど取り上げられない。仕組みを理解していない、理解しようとしない議員が多い。だから、議会で議論にならない。介護と無関係の人は、これからますますいなくなる。介護する人される人どちらの生活も質が一定程度担保される世の中にしたい」(埼玉県D市議)