(3)LINE公式アカウントを使った情報共有
発起人会、デジタル技術のアドバイザーとして室蘭市の市民活動団体Code for Muroran、室蘭市地域生活課の三者で集まり、町内会設立に向けて運営方法を検討しました。
運営方法の検討で優先したことは、持続可能な組織とするために役員負担を最小限にすることです。というのも、発起人会の2人は、ともに現役で働いていて子育て中。平日は忙しく、地域の活動に割ける時間は、休日のみとなり、それほど時間をとることができないのではないかということは、容易に想像できました。
また、地域住民の意向調査の中にも、「町内会の必要性は感じるが、子育てや仕事も忙しく、役員などはなかなか難しい」という意見が多くありました。
デジタル活用は役員負担を考えても、また住民ニーズからも、自然な選択でした。アドバイザーからの提案もあり、回覧板を従来型の紙媒体ではなく、LINE公式アカウントを利用した情報共有にしました。様々あるデジタルツールからLINE公式アカウントを選んだのは、次の3点を重視したためです。
① 一つのツールで完結すること
② 極力費用をかけないこと
③ 簡単な構成にし、他の町内会での展開も可能にすること
また、グループライン等と違い、友だち登録したアカウントの秘匿性が守られることも使いやすい要素でした。
機能としては、メッセージの配信のほか、リッチメニューボタンを活用した情報共有(市からのお知らせ、広報紙、総会資料、ごみ収集や避難場所)、役員への連絡機能を設けました。
(4)運用後の住民の反応
令和5年3月に、新設する町内会への加入申込みを行ったところ、ほぼ100%の加入率となりました。また、役員を募集したところ、数名が手を挙げてくれました。
運用開始後、すぐに数件、ごみステーションの利用マナーについて役員に個別連絡が入りました。文章だけでなく写真も送ってもらえたので、現地を見なくても状況が分かる利点がありました。
また、電話や自宅訪問に比べ、LINEでのメッセージ送信の方が、意見を伝えるハードルが下がるのも感じました。これについては当初想定していた懸念事項でもありましたが、会員からの意見の窓口はあった方がいいという役員の判断により試験的に設置した経緯があります。運用開始後しばらくすると、メッセージの件数も落ち着き、現在は問題なく運用できています。
そのほか、運用開始から1か月後、この地域に熊の目撃情報がありました。市は、ホームページやSNSを利用して情報発信したほか、該当地域の町内会長に連絡し、地域で注意喚起をしてもらっていましたが、それに加え、このモデル地区では、町内会LINEでもメッセージを配信し、住民への注意喚起をしました。
緊急性を伴う場合の情報発信は、従来の回覧板ではなかなか難しいため、デジタルの強みが生きた場面でした。
(5)「デジタル化」今後の展開
令和4年度のモデル地区は、前述したとおりデジタルツール一本で情報を共有していますが、市内で展開させていく際には、そういうわけにはいきません。デジタルデバイド対策として、従来の紙媒体はそのまま運用し、場面によってデジタルの併用・補完が基本になると想定し、令和5年度はモデル地区として多世代が住む地域を選定し、進めているところです。
5 今後の展開
当初、活性化基本方針の策定までで解散する予定だった活性化会議については、今後の取組みの評価や連携のため、継続して行うこととなりました。今後は、活性化基本方針の各種取組みを進めていくとともに、デジタル化のアドバイザーとなった団体のような市民活動団体をはじめ、町内会と関係団体等との連携が強化されるようにサポートしていくことが、本市の役割の一つと考えています。