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特集 自治会・町内会の活性化のために

2024.01.25 政策研究

地域コミュニティの高齢化と自治会・町内会

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6 何を優先すべきか

 災害が起こったときや、地域で何か問題が起こったときに、住民の総意をまとめ、スムーズに行政と交渉できる場を提供することが、自治会・町内会の一番のメリットであるとしたら、自治会・町内会は日頃から何を優先して活動すればよいのか。高齢化で活動の担い手が弱ってきたときに、何を諦めて、何を残すことが重要なのか。
 すでに述べたように、自治会・町内会は実際により多くの住民を組織しておくに越したことはない。したがって、組織維持のための広報と勧誘が最優先である。入会してもらい、会費を集め、総会で会計報告をし、できる限りその内容を各戸に伝えるという仕事が肝心である。それはあまり楽しい仕事ではないかもしれないが、必要なことである。役員が高齢化し、それが負担なら、町内会費から人を雇ってそれをやってもらってもいいと思う。首尾良く高い加入率を維持しておけば、行政も無視できないだろう。そうすれば、日頃の行政への協力活動は最低限でもよい。負担に感じることはやんわりと断ればいい。
 住民に対しても同様である。決して負担をかけるべきではない。行政への協力の必要から、防災訓練などにある程度の動員が必要であったとしても、無理強いはすべきではない。日頃の自治会・町内会の活動は、負担のない範囲で、できれば参加するのが楽しい親睦活動を中心に行うとよい。活動内容を見直して、最後に残ったものは地域のお祭りだったという例もある。
 いずれにせよ、自治会・町内会は、いざというとき住民に当てにしてもらえるように、日頃から漠然とした信頼を感じさせる存在であればいいので、無理に何か積極的な活動をしなければならないと考える必要は必ずしもないのである。

7 市民活動団体への丸投げ

 これまでは、高齢化で加入率が低下したので、仕事を減らして、何とか加入率を確保するための基本的な組織活動を優先すべきだと論じてきた。そうやって何とか会費は払ってもらえたとしても、もう少し積極的に活動を担ってくれる人を増やすにはどうしたらいいかについても、考える必要があるだろう。従来は学校のPTAなどの子ども関係の活動を通して自治会・町内会に関わってくれるようになることで、若い世代がリクルートされてきたところがあるが、この点でも少子化が状況を困難にしている。
 人は楽しそうに活動をしているところに集まってくるので、活動自体を縮小すると、どうしても人が集まらなくなってしまう。かといって、高齢化した役員に楽しい活動を生み出すことを求めるのは酷である。そこで、思い切って自治会・町内会がやってきた活動を、それに関心をもって活動している市民活動団体に丸投げするというのはどうだろうか。市民活動団体の多くは、公的な位置づけが弱いので、公共施設を借りるときも、活動をPRするときも、不便を感じる場合が多い。そこを自治会・町内会公認の活動ですとか、回覧板で広報するとかしてあげると、大変助かるかもしれない。場合によっては町内会費からいく分かの補助をしてあげてもいいだろう。
 そうやって地域で積極的に活動している人が、自治会・町内会との接点をもつようになれば、ひょっとして役員にもなってくれるかもしれない。役員まではいかなくても、お手伝いはしてくれるだろう。高齢化した役員が無理に活動して負担を増やすよりも、誰か関心のある人を探してやってもらうのはどうだろう。そんなに立派な市民活動団体でなくても、単なる愛好会や知り合いのサークルでもいい。高齢化した自治会・町内会が何でも抱え込むのではなく、広く地域の人に助けを求めればいいのである。町内会に認められているというお墨付きは、公共施設の利用をめぐる行政との調整などには、案外と効力を発揮するのである。

8 ピンチをチャンスに

 自治会・町内会にそれなりの力が残っていたときは、なかなか活動を減らすというわけにはいかなかった。他の市民活動団体と協調するにも、まずは自分たちを尊重してもらわないとというプライドが邪魔して、困難が多かった。少子高齢化によって自治会・町内会が弱ってきたことは、ひょっとしたら他の団体との連携がスムーズになったり、自治会・町内会の内部からの若い世代の新しい動きに寛大になれる時期なのかもしれない。SNSなどの利用を促進するために、若い世代の力を借りるのも一計だろう。
 たとえ高齢化していても、地域に長く貢献し、それなりの信頼を得てきた人が支えてきた自治会・町内会には、そこにしかできない役割がある。それを見極め、細々でもいいので、そのしくみを存続させていくことが、今求められていることなのである。

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