5 県庁所在地の都市で大学生・市議会議員が誕生
政治において、新しい風を吹き込む出来事が山口市で起こりました。
2022年4月、山口市議会議員選挙において、現役の大学生であった安河内淳朗さん(25歳)が市議選へ出馬し、当選したのです。
当時、山口大学の学生だった安河内さんは、候補者の中で最年少であり、唯一の現役の大学生。親戚に政治家はおらず、資金的な余裕もない、生まれ育った土地でもない。まさに「持たざるもの」の挑戦だったわけです。
山口市は県庁所在地。定数34人に対して43人の候補者が出馬した大接戦の選挙であったため、大方の見解として「無謀な挑戦」に映ったわけですが、蓋を開けてみると、1,222票を集め、34番目の得票数で見事当選を勝ち取りました。
勝因は様々ありますが、SNSを活用した若者層へのアプローチ、特に、同世代の学生たちへの訴求が奏功したことで、彼のメッセージや政策提言が拡散し、若年層を中心として支持を集めたことが大きな力となりました。
安河内さんの当選は、新たな政治家像の出現を象徴しています。
これまで、選挙は「3バン(地盤、看板、かばん)がないと戦えない」が常識でした。そういった思考が若者の被選挙権の行使(政治家への挑戦)の大きな壁となって立ち塞がってきたわけですが、安河内さんの勝利はこの制約が幻想だったことを証明する機会となりました。
「学生が地方議員になる」という日本の地方政治における新たな1ページは、地方政治に新風をもたらし、地域社会の発展に寄与すると同時に、若者の政治参加の価値を再認識させるものとなったと確信しています。
6 専業主婦の地方議員が増加する理由
地方議会において、専業主婦が増加しています。
この傾向には複数の要因が絡み合っています。ここでは、専業主婦が地方議員として増えてきている理由とその影響に焦点を当てます。
(1)出勤日数の少なさ(と高い報酬)
一つの要因は、地方議員の出勤日数が年間40日程度と比較的短いことです(※期間が短い割に報酬が高く、タイムパフォーマンスは一般サラリーマンの比ではありません)。この短い出勤日数(の割に高い報酬)は、多くの専業主婦にとって、家庭との両立が可能であると感じさせると同時に、魅力的な職業に映っています。
(2)子育て支援政策に対する生の声
日本のほとんどの自治体の一丁目一番地の政策課題は「子育て支援の充実」です。
実際、多くの地方自治体が、専業主婦や共働き世帯向けに子育て支援体制を整備しています。専業主婦はこれらの施策を実際に享受する本人として、実体験者の生の声を地方政治に反映させることができます。
(3)女性の政治参加促進
日本の地方議会では、女性議員が依然として低いという課題が横たわっています。
しかし、ほとんどの地方自治体は女性議員の増加を促進するための具体的な策を打てずにいるのが実態です。そのため、なかなか女性議員は増えてこなかったのですが、専業主婦でも議員活動は務まるという実証が進めば、今後ますますその数は増加することでしょう。
(4)地域への献身
専業主婦は一般的に地域社会に根ざした生活を送っており、地域への献身的な思い強い傾向があります。この特性は、地方議員として地域の課題に取り組む姿勢と相性が良いのです。専業主婦が地方議員として活躍することは、地域社会に新たな視点とバックグラウンドをもたらし、議会の多様性を増す一助となり、ひいては、地域社会の発展に寄与すると期待されます。
7 SNSによって日本国民はようやく民主主義を取り戻す
X(旧Twitter)やYouTubeなどに代表されるSNSという新たなメディアの登場により、日本の政治が大きな転換点を迎えています。
安芸高田市に代表されるように、ことなかれ主義的だった地方議会も、一変しつつあります。
オープンな場でのディスカッションが盛んになる一方で、異なる意見が対立する場面も増えてきました。しかし、これこそが民主主義であり、異なる意見が衝突することでより良い解決策が生まれる可能性があるのです。
SNSを通じて開かれた政治状況を鑑みた市民一人ひとりが政治を身近に感じることで、これまではタブー視されてきた家族同士・市民同士の政治談義なども積極的に行われるようになり、「自分事としての政治・選挙」という意識が芽生えてきています。
民主国家の根幹であるはずの政治や選挙を学ぶ機会が、公教育では思想信条の押しつけになってしまう等センシティブな理由で消極的でしたが、今後は、家庭や地域内での政治や選挙の学び合いにもつながるでしょうし、多くの市民の政治参加が促進されるはずです。
このような状況が続けば、近い将来、日本国民が民主主義を取り戻す日も、そう遠くないと確信しています。