地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

特集 今どきの選挙運動

2023.10.11 選挙

昭和から令和へ……変わる、地盤・看板・かばんの今

LINEで送る
東北大学大学院情報科学研究科准教授 河村和徳

 

ターニングポイントは1990年代

 昭和の選挙では、選挙に勝つには「地盤(ジバン)」、「看板(カンバン)」、「かばん」のいわゆる3バンが必要、といわれていました。地盤は後援会組織などの組織力や高校の同窓会など集票にプラスとなる人間関係、看板は知名度を指し、かばんは選挙につぎ込める資金の暗喩です。「強固な組織を持ち、幅広い人脈を用いて選挙運動を行えば多くの得票が期待でき、さらに知名度が高ければ上位当選は間違いなし」であり、無尽蔵に選挙運動にお金をかけることはできないものの、「先立つものがあれば万全」というのが昭和の選挙でした。3バンという言葉には、こうした意味が込められています。
 しかし、平成、令和と時間が経過し、私たちのライフスタイルは変化しました。それに伴い、選挙環境も大きく変わりました。とりわけ、1990年代は大きなターニングポイントだったといえるかと思います。
 1990年代がなぜターニングポイントといえるのでしょうか。一つは世界的な政治環境が大きく変わったことが指摘できます。ベルリンの壁が崩壊し、1990年代初頭には米ソ冷戦構造が終わりを告げました。米ソの対立が失われたことで、戦後日本の対立軸を示す「保守対革新」は変容せざるをえなくなりました。
 また1990年代は、日本では政治改革関連法の成立によって政治が大きく変わっていく時期でもありました。政治改革関連法の成立によって、衆議院の選挙制度が中選挙区制から小選挙区比例代表制に変更され、政治献金規正が強化される一方で、国が政党に対して政党交付金を助成する政党助成制度が導入されました。また、ゼネコン汚職や官官接待などのスキャンダルをきっかけに情報公開の仕組みが制度化され、説明責任という言葉が認知されるようになったのも1990年代です。
 それだけではありません。1990年代はデジタル化が進んだ時期でした。インターネットが普及し、コンピュータや携帯電話が生活の必需品になっていきました。コミュニケーションの手段が多様化したのも1990年代でした。インターネットの普及に伴い、選挙運動にもインターネットを活用する動きが生じ、2013年、インターネット選挙運動が解禁されました。
 令和の時代になっても、地盤・看板・かばんが選挙の勝利を左右する重要な要素であることは間違いないと思います。ただ、前述のように選挙環境は大きく変化しています。本稿では、それらの変化について述べたいと思います。


 

最適解を探す時代

 昭和の時代の選挙運動は、一般的に、地域や組織・団体をまとめる「地上戦」が中心でした。しかし、四半世紀以上の時間を経て、現在では辻(つじ)立ちなどで顔を売る「空中戦」や、インターネットを駆使して支持者を獲得する「サイバー戦」も大事と認識されています。今日では、やり方次第ですが、地盤が乏しくとも、空中戦やサイバー戦だけでそれなりの票が獲得できます。
 首長選挙と異なり、日本の地方議員選挙は、(都道府県議選では1人区がありますが)基本的に当選者が複数いますが、1票しか投じることができません。そのため、中核市や東京23区のように立候補者がかなりいる選挙では、特定の層の支持さえあれば当選できます。そのため、首長は全体代表であるのに対し、地方議員は部分代表の性格が強いといえます。
 私は、現代の地方議員選挙では、自身の強みと置かれている選挙環境を意識し、地上戦・空中戦・サイバー戦のいずれにどう資源を配分すべきか、最適解を探すことが大事になっていると思います。言い換えれば、地盤・看板・かばんをどう効果的に使うかを考える必要がある、ということです。単純にそれらが多い、少ないではなく、人によっては、リアルな空間で顔を売って知名度を上げるという方法ではなく、バーチャルな空間で顔を売ることにエネルギーを注ぐ選択肢もある時代になっているのです(1)
 ところで、実際の地方議員はどの戦線を重視しているのでしょうか。
 私が市区町村議員を対象に実施したアンケート結果が表になります(2)。各項目のうち、直近の選挙で重視したものを三つまで○を付けてもらう多重回答方式で回答してもらいました。この表からいくつかのことが分かります。例えば、市区議は地上戦よりも空中戦をやや重視する傾向があることや、街頭演説や辻立ちを市区議の方が町村議よりも重視することが表から確認できます。また、町村議は市区議よりも電話による働きかけを重視する一方で、SNSの活用を重視するのは市区議の方、ということも分かります。



1
出典:筆者作成、数値は回答者全体に対する○を付けた比率(%)
 
表 市区町村議員が直近の選挙で重視した集票手法(多重回答)


 

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 424

全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)始まる(平成19年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る