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特集 地域の課題を解決するデジタル化

2023.05.25 ICT活用・DX

地域通貨ネギーによるデジタル基盤の構築と新たな自治体経営

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4 地域通貨ネギーの実践事例

 ネギーの事業展開は、2019年度に開始した。当初は、1,000万円の寄附金を元手として、10%のプレミアムが付いた電子商品券事業として実施した。加盟店が225店舗、ユーザー数が2,358件で、この実験により電子的な地域通貨の流通と決済が実現可能であることが証明できた。
 2年目となる2020年度は、新型コロナウイルスがまん延した年である。当時、飲食店の利用が制限されたため、1,000円以上のテイクアウト利用者に300円相当のネギーカードを配布した。また、子育て世帯に対する支援として、5,000円相当のネギーカードを中学生以下の全てのお子さん約1万8,000人に郵送で配布した。予算取りの段階では、現金に相当するため普通郵便代とは別に、320円の簡易書留での郵送を計画した。しかし実際には、ポイントを付与する前のネギーカードを各家庭にあらかじめ普通郵便で郵送し、使用開始直前に約1万8,000件のネギーカードに遠隔でポイント付与を行った。各カードの会員コードには、誰に配布したネギーカードなのかの情報が付与されており、これにより500万円を超える郵便代を節約することができた。この手法は、その後も継続して他の事業においても活用されており、これまで約2,800万円を超える簡易書留の郵便代が節約できている。また、地域事業者、生活者支援の観点から30%のプレミアムが付いた商品券事業も実施した。この時点で、加盟店は614店舗、ユーザー数は約2万5,000件となった。
 3年目となる2021年度には、24時間365日ネギーを利用することができる通常チャージを開始した。また、子育て支援金や敬老祝い金など、全庁で20の事業でネギーを活用した。この年、加盟店は721店舗、ユーザー数は3万件となった。
 4年目となる2022年度には、コスト削減のモデル事業として、収税課で口座振替キャンペーンを実施した。これは新規に口座振替を申し込んだ人に500negiを進呈する取組であり、実施以前の年と比較しておよそ2倍の口座振替の申込みがあった(地域通貨の単位はnegiとし、1negi=1円で換算)。コンビニ払いだと1件の取扱手数料が67円、口座振替だと11円である。手数料を大幅に削減できることもさることながら、収納日計処理や督促状の発送件数の減少など職員の事務手間を多く削減することができる。資源制約が厳しくなるこれからの時代には、こうした一つひとつの手間やコストを削減することのできる工夫の積み重ねが非常に大きな意味を持つようになると考える。
 また、マイナポイントでネギーを受け取れるようにもした。キャッシュレスの手段を持たない高齢者の方に、ネギーカードを用いてマイナポイントを進呈することが可能となった。
 アウトレットからの観光回遊の促進と観光客の移動状況の可視化を行うため、デジタルポイントラリー「ぐるっと深谷ガチャ」を実施し、その景品としてネギーも進呈した。デジタル地域通貨は、様々な分野で活用することができる可能性を見いだした。
 その他、この年は国からの新型コロナの臨時交付金を活用してポイントバックのキャンペーンを実施するなどし、これまで56の事業でネギーを活用した。
 令和5年4月末時点における累計の取扱額は約45億negi、加盟店数は約850店舗で、ユーザー数は約4万件である。このうちアプリとカードのユーザー比率は8対2である。

5 現状の課題と今後の展望

 2019年度から開始したネギーの取組であるが、その後、思いも寄らず新型コロナウイルスがまん延し、地方創生臨時交付金を有効活用する形で、加盟店数、ユーザー数、取扱額を増大させ、デジタル地域通貨の利用基盤を築いてきた。
 現状における課題としては、ネギーの経済的利用だけでなく、更なる行政事業における活用事例を積み上げていくことである。そうした活用事例を増やす中で、運営の収支について一定のめどをつけたい。また、行政のみならず民間での利用も促進し、ネギーを市民生活の中に定着させていくことが必要である。
 今後の展望としては、ネギーをより一層地域に浸透させ、本市における確固たるデジタル基盤の構築を目指したい。また、行政事業における活用事例を増やし、行政評価における成果指標実績の向上と効率性の改善に役立てていきたい。そうしたこれまでの地域通貨のあり方とは一線を画す取組展開により、人口減少社会における新たな行政マネジメントの確立に挑戦したいと考える。
 

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