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特集 地域の課題を解決するデジタル化

2023.05.25 ICT活用・DX

地域通貨ネギーによるデジタル基盤の構築と新たな自治体経営

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深谷市産業振興部産業ブランド推進室

1 はじめに

 深谷市は、埼玉県北部に位置する人口約14万2,000人の都市である。市の面積約137平方キロメートルのおよそ半分に当たる47.5%が田畑で、市の北側には利根川、南側には荒川が流れ、関東平野らしく平坦で肥沃な大地が広がり、本市特産の「深谷ねぎ」など農畜産物が盛んに栽培されている。地域通貨「ネギー」の名称は、この特産の深谷ねぎに由来し、言いやすさ、なじみやすさ、深谷らしさを意識してネーミングされた。
 本市出身の渋沢栄一翁が、来年2024年上期に刷新される予定の新1万円札の肖像になることが決定しているが、地域通貨ネギーについては、新紙幣の発表前に構想されたことをお伝えしておく。
 昨年秋に、関越自動車道花園IC拠点付近に三菱地所・サイモン株式会社によるアウトレットモールとキユーピー株式会社のグループ子会社による野菜の魅力を体験することのできる複合型施設が完成した。この新たな産業拠点には、年間650万人が来訪する予定であり、この新たな人の流れを効果的に捉えて、外貨の獲得を含めた産業振興にしっかりと結びつけていくことが、これからの重要な仕事である。

2 政策立案の背景

 本市の人口は、2008年の14万7,000人をピークとして減少に転じた(図1参照)。2015年に策定した「深谷市人口ビジョン」によると、およそ40年後の2060年には、現状のままだと約9万人台にまで本市の人口が減少すると推計されている。人口減少が生じるだけでなく、人口構成の高齢化が同時に進行することとなり、40年後には本市全体の約43%が65歳以上になると推計されている。

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出典:深谷市人口ビジョン
図1 深谷市の将来人口推計


 まちの人口が減ると、地域における購買力が弱まり、マーケットが縮小していくことになる。また、65歳以上の高齢化比率が高まるということは、15歳から64歳までの生産年齢人口が減少するということである。主たる納税者である生産年齢人口が減少すると、本市の税収も減少することとなり、一方で、高齢者の割合が増えると社会保障費関連の支出がこれまで以上に増加していく。
 こうした状況に対応する一つの手段が、地域通貨の取組である。地域通貨は、限られたエリアの中でしか使用することができない、法定通貨の円に比べると不便なお金である。この不便なお金を自然と使いたくなるような、本市ならではの魅力的な地域経済をつくっていくことが必要である。地域の人たちが地元でお金を使いたいまちは、他所から訪れる人々もお金を使いたくなる魅力的な場所となるだろう。地域通貨をつくるということは、同時に地域の人々が愛する地元経済をつくっていくということである。そうした状態を実現し、地域内でお金を循環させ、人口減少社会に対応することのできる、足腰の強い地域経済を実現していく。その実現のために、本市では産業ブランディング推進方針を策定し、その取組の一環として地域通貨ネギーを展開している(図2参照)。

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図2 「深谷市産業ブランディング推進方針」概念図


 また、先に述べたとおり、今後は人口が減り、地域の人口構成に大きな変化が生じる。日々の生活や地域行事の際に、そうした変化が生じ始めていることについて、多くの人々が気づいているだろう。このような状況では、地域課題のあり方がこれまでとは変化していく。その状況に適応するためには、地域課題に対するアプローチをこれまでとは変えていかなければならない。自治体行政を中心としたものから、市民、企業、ありとあらゆる地域を構成する人や団体が、これまでの発想を超えて力を合わせて対応していく形に変えないと、今後生じる新たな課題に対応できなくなると想定される。
 こうした認識のもと、本市の持続可能性を高めるための手段の一つとして、デジタル地域通貨ネギーの取組に着手したのである。
 

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