かつては通信インフラも、他の社会インフラと同様に、行政が整備することが当たり前に行われていたが、情報化社会において民間事業者の通信インフラやサービスが充実してきたことを機に、これらを行政が利用することも一般的になってきた。
さらに現在では通信事業者による光ファイバーケーブルの敷設が進み、多くの家庭がインターネットサービスを利用するようになったことから、行政の情報配信にインターネットが使われるケースも増えてきた。
このことから、富士見町でもインターネットを使った情報配信について研究を始め、令和元年に、スマートスピーカー(Amazon Echo:アマゾン エコー)及び専用アプリ(Amazon Alexa:アマゾン アレクサ)をインストールしたスマートフォン(以下「スマートデバイス」という)へインターネット経由で告知放送を配信する実証実験を始めた。
クラウドサービス(事業者が提供するサーバー環境等をインターネット経由で利用するサービス)上に登録した1日4回の定時放送の原稿データを、定時にスマートデバイスが自動的に取得し、合成音声で再生する仕組みを構築し、これを「ふじみリンク」と名付けて住民に公開した。
Amazon Echoによる情報受信
クラウドサービスを利用することで放送設備を構築するためのサーバー等の機器購入が不要となり、また、行政がわざわざ伝送路を用意する必要もなくなることから、専用システムの構築に比べて、導入コスト、ランニングコストともに大幅に軽減できることが実証されたが、一方で、アカウントの取得やアプリのインストール、設定作業など、スマートデバイスを告知放送用受信機として使えるようにするための準備が、デジタルに強くない住民にとっては大きな障壁となることが浮き彫りになった。
より簡単に利用が始められ、迷わず操作を行うためには、多くの住民が普段使いしているアプリを利用することが最も効果的と考え、令和3年には「ふじみリンク」をバージョンアップし、1日4回の定時放送の内容(テキスト)をLINEでも受信できるようにした。
LINEによる情報受信
さらに令和4年には、各自治区からのお知らせ(お悔やみ情報や、お祭り、イベントの告知など)を自治区役員等が自ら配信し、自治区に居住している住民がLINEで受信できるように対応を行った。
現行の告知放送システムでは、自治区の役員等が専用ダイヤルに電話し放送を登録する仕組みとなっており、放送登録の際に入力した地区コードに対応した受信機にだけ放送が配信される。
LINEに各自治区からのお知らせを配信するためには、専用ダイヤルに相当する配信システムの開発と、利用者が自分の居住する自治区を登録するための受信設定機能をLINE上に実装することが必要であったが、これらのシステム開発は、富士見町が運営するコワーキングスペース「森のオフィス」を利用するICT事業者に委託した。
自治区単位のお知らせを発信するためのツール