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2022.05.13 医療・福祉

さいたま市重度障害者等の就労支援事業

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 私は、この際の市長の答弁は「制度創設に前向き」と認識しました。ところが、その後にこの問題について他議員から後追い質問が行われた際に、「国に働きかける」という答弁がなされたのです。これでは「後退ではないか」と感じた私は、議場外で担当する職員にその感想を述べると、担当者は「後退ではない。これは国の制度なので、まずは国に制度改正を働きかける。それでも改正されなければ、その次に市の単独事業の検討に入るのが筋」と反論されました。
 私は、職員のその発言や姿勢に本気度を感じたのでした。
 その職員の本気を醸成させた背景には、当事者である障害者の行動、発信力があったのです。さいたま市(中央区)においては、長年にわたって旧国立病院の療養介護病棟を退院して自立生活を送る若者たちがいます。その若者たちは、自立生活を送るために必要な行政サービスの改善や創設を積極的に行政、政治に求めてきました。また、地域でともに暮らす市民に対しても、例えば私が主催する「漫才市政報告会」への参加やマスメディアを通しての発信により理解を深めていく努力を続けたのです。
 そうしたこともあり、市民、市職員と議員は、重度障害者が地域でともに生活していくための課題を共有する環境にあったと思います。
 市長は2018年6月、地方分権改革の自治体提案として在宅就労中の制度利用を認めるよう国に要望しました。しかし、当面の制度改正は見送りとなり、2018年12月定例会一般質問に登壇した私は「若者が働いて得たお金で自立生活を送るために懸命に頑張っています。国は制度改正を見送ったが、こうした若者たちの背中をそっと押すのが行政や政治の役割ではないか。市は単独事業として取り組むべきだ」と市長に迫りました。
 市長は、「市単独で対応することを検討する」と答弁し、2019年度よりさいたま市は「重度障害者等の就労支援事業」を開始しました。事業創設を強く働きかけた猪瀬さんや矢口さんをはじめ現在7人の市民が事業を利用し仕事をしています。この事業を利用し、重度障害者が仕事をして自立生活を送っているさいたま市民の姿は、全国各地の重度障害者が希望を感じることにつながりました。現在までに多くの地方議会においてさいたま市の取組事例が紹介され、また国においても大きく制度が改正されたこともあり、全国各地に制度が普及し始めています。
 さいたま市の重度障害者は、重度訪問介護サービスの利用によって自らの意思で仕事をして自立生活を送ることができることを自らの行動で証明しました。

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