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特集 求められる議会事務局

2022.03.10 議会事務局

「行動する議会(事務)局」の役割とは何か?~大津市議会局での実践~

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越権行為論と国会準拠論に対する疑問

 一つには、局職員から議会への発意など越権行為との指摘がある。具体的には、「議員は選挙を経た市民の代表であるから、民主的正統性を欠く局職員が意見するなど越権」というものである。だが、選挙を経て市民の負託を受けているのは首長も同様であり、議会の補助機関だけが越権とされる理由にはならないだろう。
 また、国会における議院法制局との比較で異議が唱えられることもある。議院法制局では、国会議員からの求めを受けて法制意見を述べることはあっても、政策立案内容そのものに予断を与えかねない意見を述べることや、政策自体を職員が提案することは、公務員の政治的中立性の観点からあり得ないと考えているからだ。だが、先の大森教授の指摘にもあるように、地方自治体においては首長部局でも首長だけが政策をつくるわけではなく、職員が政策の青写真を描き首長に進言して政策ができる場合も珍しくない。職員の政治的中立性確保について定める地方公務員法は、首長部局職員、局職員両者に等しく適用されるものであり、議会の政策形成過程で同様の行動をとることに、法的疑念が生じるとは考えられない。
 そもそも、議院法制局での考えに、地方議会の議会局も合わせるべきだとの発想自体に大きな疑問を感じる。それは、国の機関への準拠を正当とする法的根拠などないからだ。例えば地方公務員給与の水準に関する論点では、地方公務員法24条2項の「均衡の原則」に基づき、国家公務員の給与水準を考慮することが規定されており、国が決めたことに地方が準ずる法的根拠はある。だが、議会の政策形成過程での局職員の関与のあり方については、国会職員の行動規範に準拠しなければならない法的根拠は見当たらない。
 それにもかかわらず、国会を標準として捉え地方議会もそれに準拠すべきとの考え(以下「国会準拠論」という)は、当該課題に限ったものではなく、日常の議事運営ではもちろん、オンライン議会実現のために自治法改正を要望しても、国会答弁では国会がオンライン化されていないことが法改正できない理由の一つとして挙げられるなど、地方議会運営全般にわたって根深いものがある。
 だが、国会準拠論は、自治体を独立した団体とし、国に対して独自の地位を認める「団体自治」の考えに反するものであり、地方議会における局職員の行動規範は、国会での考えとは関係なく地方議会で自己決定されるべきものではないだろうか。

「チーム議会」の必要条件

 議会の機能は「行政監視機能」と「政策形成機能」の二つに大別されるが、そもそも議員自身が監視機能の発揮だけで満足し、議会からの政策形成の必要性を感じなければ、「参謀」としての局職員の出番はない。自治体の主要な政策形成は、首長、議会のどちらも個人ではなし得ない。議会は複数の公選職で構成される合議制機関であるがゆえに、一義的には議員間における合意形成力が問われ、局職員との関係性が論じられることは少ない。しかし、議会として政策形成機能を発揮するには局職員との協働(2)は不可欠であり、また、議員と局職員の協働関係の構築は、「チーム議会」の必要条件である。
 旧態依然とした局職員の意識改革は大前提となるが、議会における議会(事務)局の役割を最終的に決めるのは議員である。局職員との協働関係確立の実現可能性は、議員の度量次第だからだ。
 少なくとも大津市議会で協働が成立するのは、公選職の立場におごらず、任命職である局職員からの提案にも真摯に耳を傾け、トライアンドエラーを許容する議員の姿勢があればこそである。特に新たなチャレンジには常に失敗のリスクが伴うため、それを許容する懐の深さが議員になければ、議会局が新たな提案を続けることはできなくなる。だが、大津市議会でも、局からの提案が全て議員に受け入れられているわけではない。それでも、自らの主張が信念に基づくものであれば、局職員も広い意味での議会の構成員として、諦めずに主張し続けるべきであろう。他議会の局職員からは「そんな態度は議員に対して失礼だ」などといわれることもあるが、議員に敬意を払うことと、議員からの求めがない限りもの申さないことは、次元の違う問題である。

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