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特集 求められる議会事務局

2022.02.25 議会事務局

議会事務局の役割─県議会事務局での経験から─

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3 ウィズコロナの時代における議会事務局の在り方

 2020年1月からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、議会運営にも影響を与えた。議会の中には執行機関側に配慮したのか、補正予算を長の専決処分とし、一般質問を自粛・会期を縮小・政務活動費を自主返上するなど、議会の議事機関としての機能を議会自ら放棄するようなところも多く見られた。このような場合にこそ議会事務局の役割は重要である。議員が消極的であれば、議会事務局が議事機関としての議会の機能発揮ができるような議会運営をサポートすべきである。
 また、総務省が同年4月末に「条例や会議規則等について必要に応じて改正等の措置を講じ、新型コロナウイルス感染症のまん延防止措置の観点等から委員会の開催場所への参集が困難と判断される実情がある場合に、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法を活用することで委員会を開催することは差し支えないと考えられる」との見解を示した。これを受けて大阪府議会や堺市議会等の議会改革において先進的な議会では、早速、関係条例等を一部改正してオンラインによる委員会開催を可能としたが、全国の自治体議会ではまだ対応されていない議会も多いのではないかと思われる。
 ただし、この総務省の見解に従っていれば、議員が参集できないような場合でも本会議についてはオンラインによっても開催できないのである。
 そうすると今後、新型コロナウイルス感染症のまん延等のため諸外国のようなロックダウン状況に陥った際には、本会議が開催されず議会として意思決定ができずに長の専決処分ばかりになってしまい、憲法で規定された議事機関としての議会の機能が発揮できないのではないか。議会としては、このような異常事態は回避しなければならない。
 そこで、議会改革の先進的議会、例えば茨城県取手市議会では議会の最高規範とする議会基本条例を一部改正して、「議事堂に参集することが困難なときは、その状況に応じた情報通信技術の積極的な活用を通じ、議会活動の継続を図る」とオンライン本会議開催への扉を開けたのである(4)
 このように、地方自治法がオンラインによる本会議開催を認めていないとする総務省解釈を忖度(そんたく)して単に法の改正を同省に要請して待っているだけでなく、自治体議会が自治立法分権の考え方(5)を援用するか、法令解釈権と条例制定権の可能性と限界に挑戦し、議会事務局が法の空白部分に対処する条例案(6)を策定して議会に提案(7)してみたらどうか。自治体議会の自律権の問題や議会の危機管理の問題として考えてみることもできるのではないか。
 かつて自治体に「議会基本条例」を提案した北海道大学名誉教授の神原勝先生の説を採用したとされる北海道栗山町議会基本条例19条2項(制定当時)の「議会は、議会に関する日本国憲法、法律及び他の法令等の条項を解釈し、運用する場合においても、この条例に照らして判断しなければならない」という規定ぶりを、15年の議会改革の歴史を経て今一度かみしめる必要があると思う。
 将来予測が不確実であるウィズコロナ時代にあっては、「石橋をたたいて渡らない」公務員よりも「石橋をたたいて壊す」公務員の方が評価されるのではないか。ここが議会事務局職員の腕の見せどころであると考える次第である。

(1) 高沖秀宣「大規模自治体議会の改革」自治日報2019年1月25日。
(2) 二元代表制における議会の在り方検討会(三重県議会)「二元代表制における議会の在り方について最終検討結果報告書」(2005年3月30日)。
(3) 三重県における補助金等の基本的な在り方等に関する条例(平成15年三重県条例31号)。
(4) 高沖秀宣「議会基本条例15年の軌跡」自治日報2021年9月10日。
(5) 礒崎初仁『立法分権のすすめ』(ぎょうせい、2021年)参照。
(6) 剱持麻衣「条例制定をめぐる論点と先進的な条例」北村喜宣ほか編著『法令解釈権と条例制定権の可能性と限界』(第一法規、2022年)参照。
(7) 東京都墨田区議会基本条例24条(議会事務局)2項参照。

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