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特集 求められる議会事務局

2022.02.25 議会事務局

議会事務局の役割─県議会事務局での経験から─

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2 三重県議会事務局での経験

 筆者は、2002年4月から2011年3月まで三重県議会事務局に所属していたが、今から20年前に赴任した当時は、いわゆる地方分権一括法が制定施行されて間もなくであり、「議会改革」という言葉自体もまだ定着しておらず、そのような議会の動きは「議会活性化」と呼ばれていた時代であった。
 2002年4月に政務調査課で議員提案条例のサポートを担当する政策法務監となった筆者は、まず、「二元代表制の在り方検討会」の担当責任者として、各会派から選出された議員と具体的な議会の在り方を3年間議論し、その報告書(2)に議会からの政策提案のシステムを提案し、いくつかの提言事項の最初の項目に「議会基本条例の制定」を掲げた。この間、検討会の座長である議員の指示を受け、自治体議会に詳しい多くの大学教授等を訪問し意見交換をしてきたことが、2006年に都道府県議会では初めての議会基本条例を制定することに結びついたと思っている。
 検討会で議論を始めて間もなく、当時の知事が一企業の生産工場を県内誘致するために90億円もの補助金を出すと言い出した。そこである議員から、「知事が補助金の交付決定をする前に議会の議決を経ることを条例で規定することはできないか?」と提案があり、筆者を含め3人の政策法務担当で条例案の原案作成にとりかかった。
 条例案の核心部分として、①補助金の額が高額(一定額以上)の場合、又は②県民生活に多大な影響を与えると思料される場合、知事は当該補助金の交付決定の前に議会の議決を経ることを盛り込んだ。
 この議会側の検討状況を知った知事部局は、総務省の地方自治法担当者と協議したのか、当時同省から出向してきていた副知事をバックにして、「三重県議会が検討している条例案は、総務省も違法ではないかと言っている」と横やりを入れてきた。
 そこで筆者ら3人の政策法務担当者が総務省の地方自治法担当者に直談判するため同省に乗り込んだが、その際に議論した若い担当者は「議会が議決することができるのは、地方自治法96条1項のみであり、2項の規定に該当するものは何もない」と大見えを切ったのである。
 この総務省担当者との議論が物別れに終わり、筆者らは三重県議会に戻って打開策を検討したが、その後の議員との議論の結果、(退任することが決まっていた)知事が退任前の花道として補助金の交付決定をしようとする前に議会が関与しようとする規定は、長の執行権を侵す可能性を否定できず、今回は削除しようということになった。そこで二元代表制の見地からかなり意欲的に議論はしたものの、結局のところ、あまりインパクトのない補助金条例(3)となった経緯がある。
 今日、議会基本条例制定後15年の歳月が流れ、議会の議決すべき事件がどんどん条例で規定され議会の権限が強化されようとしている現況からすると、20年前の総務省の若い担当者とのやりとりは、今では考えられないレベルの話だったと苦笑いする次第である。

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